case.3
05
上西さんがきてから一週間。
大学はまだ始まらないため、バイトの出勤日を少し増やしてもらうおうと社員の先輩に話した。どうにしろ一人暮らしなのだから生活費を稼がなければいけないし、美奈とデートする金も欲しい。
今日は美奈がバイトのため、会うことはないが、そういう日は自分の職場の先輩、後輩からは美奈との関係について物凄くイジられる。正直やめてほしかったが、美奈との関係が良好だからイジられるのだと我慢するしかない。

羨ましいとは言われるが、美奈と付き合えるのは俺が変わり者だからという理由以外に無いはずだ。
裏切らなければ何処まででも愛情を注いでくれる彼女を相手に、重いとか言う奴はただの根性無しでしかない。

恥ずかしい独り言だったが、ふと気になったのが上西さんの指輪だった。
今思い出しても、男の人が住んでいる様子も、出入りしている様子もない。しかしあの指輪は明らかに左手の薬指にはまっていた。
元旦那さんと円満に離婚でもしたのだろうか。一度考え出すと止まらなくなってしまう。次に上西さんと会った時に自然に聞いてみることにしよう。


「おっと、なんだ・・・?」


美奈:来週さ、あんたの誕生日祝ってあげるねー(*ゝω・*)
どんなものあげようかな〜?あ、前に上西さんが言ってたように、頑張るのとは別だから安心してちょ(^3^)/


いやだから何を頑張るつもりだ。
返信すると墓穴を掘りそうなので既読スルーにしたが、祝ってはくれるようだ。なら逆にお礼のサプライズをしてやろう。
貰うだけじゃ面白くはない。
美奈の好きそうなものを探すために服、化粧品、お菓子など、探せるものを探すことにしたが、そこで思い付いた。上西さんがいるじゃないか。
上西さんなら、こういう時に良い情報を持っているかもしれない。
連絡先が無いため、急に押し掛ける形にはなってしまうが、上西さんの部屋を訪ねてみた。


「あれ、留守か」


上西さんが出てこないが、物音は聴こえてくる。突然の来客にバタバタしてるのか。だとしたら少し悪い事をしたようだ。
少ししてドアがガチャガチャした後、上西さんの声が中から聴こえた。


「小山君?あ、よかったぁ。ちょっと今、状況があれだから、ドアを開けたらすぐに中に入って」

「え?あ、はい・・・あ、う!」


何か事情があるのだろうか。ドアをゆっくり開けると、いきなり手を引かれ、部屋の中に引っ張られた。


「ごめんね、いきなり・・・」

「・・・な、なるほど」


上西さんはバスタオル一枚を巻いただけの姿だった。あれだから、というのはこういうことか。


「小山くんなら中に入れてもよかったから・・・」

「俺じゃなかったらどうするつもりだったんですか・・・」

「入れないわよ。それより小山君、何か用?」

「あ、あ、その・・・美奈・・・いや、美奈の為に、な、何でもありません、すんません!」


恥ずかしさのあまり、いそいそと部屋から逃げ帰った。
すぐ他人に頼ってはいけない。もう一度考えてみる事にした。

■筆者メッセージ
新年明けましておめでとうございます。
今年も頑張って書いていきます。
壮流 ( 2020/01/01(水) 15:04 )