04
全てを観終えた頃、時刻は8時過ぎだった。人とは不思議なもので、一人で観るのと二人で観るのとでは、観終えたあとの感覚が大きく違うものである。
和希はトイレに行ってしまったが、欲情した感じは無かった。
むしろ、映画を観終えた後に体を伸ばしているだけ、という感じだった。私がただ一人で欲情しているだけか。
不意に体を擦ると、気分が高まってきた。私は確信犯なのだ。“いけないこと”をしているのに気分が高まっている。麻痺しているとはまさにこの事なのか。
トイレから戻ってきた和希を、私はぎゅっと抱き締めた。
「え、ちょっ、未央、未央奈!?どうした!?」
「あ、あのね・・・体が熱いの」
「え、あ・・・あつ、確かに、熱いわ・・・」
「和希・・・ね、私の目を見て」
「え、ちょっ!?」
単なるキスじゃない。AVであったような、舌を絡めるキスをしてしまった。和希が高まってこないなら、私が意地でもやらなければ。
「んっ」
しかし、やった事のないキスなどでは和希はなびかなかった。
そのうち焦り出した私はついに恥も何もなく、考えを巡らせることもなく、気づけば和希のズボンに手を入れ、パンツにも手を入れ、本物のアレを触っていた。
もうここまできたらヤケクソだ。
「ちょっと待、待って、未央奈!待ってって!!」
「え、あっ、なんで・・・」
「・・・これが目的だったのか」
「あ・・・それは」
「お前・・・」
ダメだ、終わった。そう思った。
だが和希は予想外の返答をした。
「風呂入って、体洗ってからにしよう」
「・・・え?」
「したいなら、まずはお互いに体をさらけ出す所からだ。それに綺麗にしてからの方が、気持ちいいし」
「え、え?」
「未央奈?どうしたの、早く」
思えばこの返答が、後々、和希の秘密を解く重要な鍵になる。当時の私はそんな事想像も出来なかったが。
何しろ、私はこの返答が意外すぎてただ従うしかしなかった。
和希が先に風呂場に入ったのを確認すると、バスタオルを複数枚、扉の前に置く。私は裸になった。
家族以外の人に体を見られるのは元々恥ずかしかったのに、今日はこの先まで予定を組んだ上での彼氏と二人での入浴なのだ。
私は初めて、風呂場に入るのに緊張をした。
「・・・和希」
「未央奈・・・」
「恥ずかしいよ、いきなりお風呂とか言われてのこのこ従った私もあれだけど」
「そっちがしたいと言って俺の事呼んだのに、今更やめるのかよ」
「・・・やめないよ」