06
「んんっ!」
車から降ろされた佑唯は逃げようとしたが、喉元に突きつけられたナイフに怯え、大人しくついていく。
だがこの男達は少し不思議だった。ただレイプをしたいだけならば、あの場所から少し離れれば人目のつかない場所など腐るほどあるのに、このビルのエレベーターに乗った後も何もしてこない。
口を塞がれたまま、佑唯はエレベーターのボタンだけを真っ直ぐ見ていた。
階層は9階。降りて廊下を進むと、すぐ近くの扉に入った。すぐさま目に飛び込んできたのは、黒スーツで強面の男達がオフィスでくつろいでいる景色だった。
タバコ臭い上に視線が冷たい。口のテープを外された佑唯は、泣きそうになりながら一番奥の男を見た。
「・・・ごくろうさん」
「あ、の・・・・・・」
「・・・」
リーダーなのか、そんな雰囲気の男はタバコの火を消すと、ゆっくり立ち上がり、佑唯の方を見た。
「お嬢ちゃん、ちょっと話を聞かしてくれるかい」
「な、なんですか・・・」
「・・・お嬢ちゃん、こいつと一緒に歩いてなかったかい」
見せられたのは写真。そこに写っていたのは渉だった。
「白兎夜さん・・・」
「白兎夜・・・こいつの名前か?」
「え、あ、い・・・」
「じゃ、間違いねえな。陽菜が一緒にいるはずだ、迎えに行ってやれ」
「へい」
この男達は渉を狙っていた。連絡をしたいのだが、この状況では動きようがない。
「俺らがタマ取りゃ大手柄っすね、アニキ!」
「ああ、あの野郎に盗られたもんは相当デカイからな。うちの組以外にあの野郎を狙ってるとこはまだまだあるし、このチャンスはものにするぞ、絶対」
渉に相当な恨みを持っている。しかも、同じような組織がいくつも渉を狙っていた。ここに根付いている闇とは何なのか。
「万一逃げ出しても、このお嬢ちゃんが人質だって言や絶対に来ますよね、アニキ?」
「・・・どうだか。あの野郎にそんな情があんのか、疑わしいもんだ」
(白兎夜さん、そんな人なの?うちの事、そんな簡単に見捨てるの?)
「ああ、忘れてた。出てったやつに言っとけ。鴻上の奴がウロウロしてっから気を付けろってな」
「鴻上っすか、あの・・・」
「・・・俺らの用事とは関係ねえだろうが、あまり嗅ぎ回られると困るからな」
佑唯にとっては何がなんだかわからない状況だが、とにかく危ないのは確か。渉がいなくなったら、自分は何もなくなってしまう。
せっかく、渉への少しの恋心を抱き始めたのに。
「ねぇ、渉さん、そろそろあたし、気になっちゃったんだよねー」
「何が気になっちゃったんでしょうかねぇ」
「こんなイケメンとワンナイトラブなんかで終わっちゃうなんて嫌だからぁ、相性を確かめたいんだよね。勿論わかるよね」
胸元をはだけさせ、渉の体に押し付けた。何が言いたいのかは明白だ。
「・・・行きましょうか」
「わかってくれてありがと。じゃ、こっち来て」
徐々に悪い方向へと進んでいく渉。
佑唯と共に、運命はどう転ぶのか。
「・・・おい颯、騒がしくなりそうだけど、どうするよ?」