01
「君は・・・何者だ?」
「何者・・・ですか」
高橋警部の手は震えており、拳銃も照準が定まっていない。
彼の意図を察したこの男は、こう答えた。
「自分は、白兎夜渉です。今泉祐唯さんの歌に惹かれ、彼女と旅をしました。空っぽの人間だった自分に、生きなければならないきっかけを与えてくれました。そんな彼女を、守る為に生きていきたいのです」
「・・・そうか・・・わかった」
「えっ!?警部!?」
「・・・こいつは白兎夜渉だ。暗罪黒兎じゃない」
「しかし!!」
「暗罪黒兎は死んだんだ。生きていると思うのなら、勝手に捜査しろ」
高橋警部は冷たいながらも覚悟を持った言い方で、刑事達の警戒を解いた。
「それでは、改めて。白兎夜渉。あなたを強姦事件の犯人として、逮捕します」
「・・・わかりました」
「それから逃亡を手助けしたとしてあなたも連行します、堀未央奈」
「・・・まぁ、仕方ないわよね」
パトカーに連れられる白兎夜渉と未央奈を、祐唯は泣きながらじっと見ていた。すると高橋警部が、祐唯の方に戻ってきた。
「大丈夫、年月はかかるけど、殺したりなんかしないよ。それまで、君は我慢してほしい。約束ね」
「・・・はい・・・」
後日、白兎夜渉と堀未央奈の逮捕はニュースになった。暗罪黒兎に似た別人である、として報道され、世間は疑いの目を持ちつつも追求する事はなかった。
祐唯はあれから社会人として働き、渉が出てくるまでの長い年月を耐え忍んだ。彼氏も作らず、時には眠れない日もあり、どれだけ怒られようとも渉が出てくるまで、という心情で頑張っていた。
ーそして時は流れ、遂にやってきた、この日ー
「はい、どちら様で・・・」
「白兎夜渉です」
「!」
白兎夜渉が帰ってきた。祐唯は泣きながらも笑顔で、渉を家に引きずりこむように迎え入れた。
「もう、遅すぎますよ・・・私、辛かったんですよ・・・!」
「9年も経ってしまいましたね。遅くなってすみません」
「でも、ちゃんと約束を覚えててくれたから、許してあげる・・・」
涙を拭うと、祐唯は渉の頬にキスをした。
「こ、これは・・・」
「渉さん以外の人にはしてませんから、安心してください」
「・・・そうですか、嬉しいです」
「あの、渉さん!その・・・だから、その、キスを許してないから・・・」
「・・・何が言いたいんですか?」
「・・・初めての、せ、セックスも・・・渉さんに・・・」
「いいですよ、嬉しいです」
何をしてよいか分からない祐唯。あたふたしていると、渉は祐唯の唇にキスをした。
「こ、これは・・・」
「もっと激しくしてあげましょう」
今度は祐唯の舌に渉の舌が絡まる。さらに祐唯の上唇を舐めたり、吸い取ったりと、処女相手に容赦のない渉。これまでで一番気持ちのよい、嬉しいキスであるに違いないため、歯が当たろうとなんだろうと、長くディープキスをしていた。