プロローグ
02
そして次の日。仲良しの二人は公園にやってきた。昨日の雪だるまは、少し溶けて形が歪んでいる。
おまけに溶けたことで硬度が増していて、形を整えることが出来ない。


「どうする?雪だるまボコボコ」

「んー、あ、あのお兄ちゃんだ」



男は時間通りにやってきた。昨日と同じ黒いコートに、黒いハット、そして今日は荷物がある。


「ねえお兄ちゃん、雪だるまがボコボコ」

「昨日は晴れていたからね、溶けて形が悪くなっちゃったんだ」

「でも、目とか鼻とかつけるよね」

「そう、やっぱり顔は大切だよね。さ、まずはこれを付けよう」


取り出したのは黒くて丸い石。真っ直ぐに伸びた木の棒一本。曲がった木の棒が三本。そして小さな手袋。
一体どう付けるのか。


「これは目。これは鼻。これは口につけるんだ」

「これは、目っと」

「えい!わ、立派な鼻だぁ」

「口が難しいよぉ」

「口は、こうやって端のところを刺すようにすると・・・」

「あ、ついた!」


「さ、後はこれが手だよ。これを刺して、最後に手袋をつければ、完成だね」




雪だるまは完成した。表情がつき、そこに命があるように。
三人は雪だるまの傍で話をしていた。


「お兄ちゃん・・・なの?おじさんにも見えないし、でもお兄ちゃんにも見えないよ」

「そうだな、俺は何なんだろうね」

「ねえ、じゃお兄ちゃん何歳?」

「・・・36歳だよ」

「えっ!ママより歳上だ!」

「僕のママもそうだ!」

「そうなんだ、二人のママよりも大人なのか」

「じゃ、おじさんでいい?」

「いいよ、俺は今からおじさんだ」


慣れ合ってはいるが、端から見れば異様な光景。怪しい男が二人の子供に話しかけて、一緒に雪だるまを作っているなんて支離滅裂なのだ。
おじさんになった男に、少女はまだ質問をぶつけた。


「おじさんが持ってきた手袋って誰の?」

「あの手袋はね、おじさんの子供の手袋だよ。二人と同じくらいの歳の子供がいるんだ」

「へぇー、じゃ、おじさんはお母さんがいるんだ」

「・・・お母さんはいないんだ」

「何で?」

「・・・さぁ、何でかな」


男の様子が変わった。何かバツの悪そうな顔をしている。



「さてと、おじさんはそろそろ行かなきゃ」

「どこ行くの?お家帰るの?」

「おじさんはね、旅をしてるんだ。だからお家は無いんだ」

「え、じゃ、どこで寝るの?」

「寝られるかどうかはわからない。旅をしてて、寝られる場所に着けるかどうかもわからないからね」

「なんで旅をしてるの?」

「・・・探してるものがあるんだ」


「んー、よくわかんないよぉ」

「ま、大きくなったらわかるかもしれないね」

「ねぇおじさん、また雪だるま作って遊んでくれる?」

「そうだね、いつになるかは分からないけど約束するよ」



男が急に歩き出した途端、強い吹雪になりだした。だが10秒ほど経ち、突然吹雪は止んだ。
二人が目を凝らすも、そこに男の姿は無かった。

彼は何者なのか。夢でも見ていたというのだろうか。二人の少年少女はしんしんと降る雪の中、差してくる日の光を見ていた。

■筆者メッセージ
主人公は少し変わってます。
諒くん、優くんみたいな優しい普通の男でもなければ、颯くんみたいな渋くて男の中の男ってわけでもありません。
今回の主人公は“8割ダーク”なイメージです。
壮流 ( 2016/12/24(土) 21:34 )