02
車を走らせて数分、目的地に着けば駐車場へ停めて門を潜ろうとしていた。
警備員に一度止められるも奥から出て来たベテランの警備員に会釈をするとすんなりと中へ入れた。
おそらく立っていたのは新人なのだろうと思いながら足を進める。
最近ここへは来る事がなかったが意外と覚えているもので最短ルートで部屋へ辿り着いた。
ここの椅子は相変わらず座り心地が良くどかっと座ると終業のチャイムが鳴った。
乃木坂女学院付属高等学校。
大学で関係を持った女性の大半がここへ通っていたお嬢様学校。
かつてここで一度奈々未達に出会っていた。
ここはその生徒会室。
「げ」
『よう』
「ちょっと、何でいるの」
『お嬢様がげ、何て言うなよ』
「私の質問に答えてよ」
生徒会室へ入って来た女子生徒は裕太を見つけると詰め寄って来た。
『強いて言うならなんとなく』
「そんな理由で来れる場所でもないし来て欲しくないの」
『警備員の人は入れてくれたよあっさりと』
「もういい。で、本当に何で来たの?」
『この間飛鳥の話題になったから会いに行こうかなと思っただけ』
話していたのはこの学校の生徒会長で婚約者、深川麻衣の異母妹である齋藤飛鳥だった。
「私の?お姉ちゃんと話したの?」
『いや、麻衣だけど白石の方達と話してた』
「まいやん?懐かしい元気だった?って何で私の話題になったの」
『元気すぎるくらいに。俺と麻衣が許婚ってのが奈々未に知られて広まって、麻衣の妹が飛鳥って事言った』
「何で言っちゃうの?信じらんない!」
『別に怒る事ないだろ、よくある事だし』
「私達の周りではそうかもしれないけどまいやん達の周りでは違うの!」
目の前の机を叩いて言っていると部屋の近くから足音がした。
『誰か来たんじゃない?』
「嘘っ!ちょっとこっちに来て!」
飛鳥は裕太の手を掴むと生徒会室の奥にある生徒会長室へと連れて行った。
「あれ?会長先に生徒会室に行くって言ってなかった?」
「いないね、どうしよう。待ってる?」
生徒会役員が部屋へ集まる中飛鳥は会長室の鍵をそっと閉めた。
『いいのか?会議か何かあるんだろ?』
「あんたが居るから出来ないの、分かる?」
『俺の事なんか気にせずすればいい』
「大体ここに男が居るのが本来あり得ないんだから皆の前には出せない」
『兄貴だって言えば?』
「義理のね。てかそもそもまだ義理の兄にもなってないじゃん」
溜め息を吐くとスマホを取り出して今日の会議を中止するメールを全員に送っていた。
そんな後ろ姿を見ていた裕太はゆっくりと飛鳥に近付いた。