三日目
02

「お久しぶりです、裕太さん」

麻衣は裕太に挨拶をして奈々未を見た

「ななみんも、久しぶりね」

「え、まいまい?何でここに?」

奈々未は驚いていた。
確かに麻衣の実家が金持ちなのは知っていたがまさかこのような場所で会うとは思ってもなかったようだ。

そして裕太と麻衣が知り合いだったのも驚きだった。

しかも麻衣が敬語なのに対して裕太は『よう』の一言だけを返していたのだ。

裕太は自分と同い年で麻衣は自分の一つ上、普通なら裕太が敬語を使うべきなのでは?と顔には出さずに考えていた。

『麻衣も来てたんだな』

「ええ、このホテルはお父様も建設に関わってるものですから」

『ふーん、俺全然知らなかったな。それより元気だったか?』

「はい。裕太さんもお元気そうで何よりです」

『…てかやっぱ敬語やめてくんない?俺の方が年下なんだし』

「ですが…」

『結婚して敬語使われんのとかやだからな』




「結婚!?」



二人の会話を聞いていた奈々未が漸く口を開いた。

「今何て…結婚?」

『ん?あぁ、奈々未は麻衣の後輩だったっけ。俺ら一応許嫁なんだよ』


「はぁ?」


奈々未は今日何度驚けばいいのだろうと思っていたが驚かずにはいられなかった。

二人が許嫁という事実。

そして相手がいると言うのに他の女性と身体の関係を持つ裕太に。

「裕太ってさ…まいやんと…」

『だから付き合ってねえから』

友人と付き合っていると思っていながら身体の関係を持つ自分を棚に上げながらそれにしてもこの男は自分の知る限り沢山の女性に手を出しているのを知っていた。

その事は彼女は知っているのだろうか。

「まいやん?裕太さん、あの子と仲が良いのですか?」

『まあ、よく泊まりに来るし。飯作ってくれるし』

「…そうですか」

話を聞いていた麻衣の表情が曇った。

それもそのはず、自分の許嫁が他の異性に料理を作ってもらい寝泊まりもしていると聞いたら普通は怒るものだ。

「いいな、まいやん…」

だが、彼女は普通では無かった。

「え、怒らないの?」

「怒る?何で?寧ろまいやんが羨ましい!あぁ、私も裕太さんと同じ大学へ行けば良かった…」

「いや、そうじゃなくてさ。コイツ性格はともかく顔はいいでしょ?浮気とかそういうのはさ…」

『おい』

「別に裕太さんが誰と付き合ったり身体の関係を持っててもいいの。最後に私を選んでくれれば」



金持ちの子供は庶民と考え方が違う

奈々未は麻衣の言葉と裕太を見てそう思った。

凛句 ( 2016/01/24(日) 08:16 )