第2話
美月「せんぱーい、酷いですよ!」
鍋をした次の日のサークル前、俺が着替えて部室から出ると美月が立っていた。
晃樹「なんだよ男子更衣室の前で待ち伏せなんかすんなよ、びっくりするだろ?」
美月「そんなことどうでも良いんです。それより、日奈子さんから聞きましたよ!どうして私も鍋に誘ってくれなかったんですか!」
美月は腰に手を当てて怒っているアピールをするかのように俺を責める。
晃樹「どうしたもなにも、日奈子と鉄平には前に真夏に合わせるって約束してたし、だいたい美月呼んだら絶対真夏に挑発したりして面倒な事になるだろ」
美月「挑発なんかしませんよ。ただ、私より可愛いか確認するだけです。とにかく、私も先輩の彼女に会いたいです!」
語気を強める美月。
晃樹「あのなぁ、確かに美月は可愛いよ?でも、俺の中で真夏より上になる事はないから」
美月「…先輩は、本当にそれで良いんですか?」
美月は俺の言葉に少し首を振ると、何故か呆れたように急に挑発的な視線を送る。
晃樹「どういうことだよ?」
美月「今自分が食べてるものが1番美味しいとは限らないでしょ?それと同じですよ。今の彼女が1番とは限らないんじゃないですか?」
晃樹「それとこれとは…」
美月「同じですよ!」
俺の言葉に被せるように発すると、さらに近寄ってきて少し背伸びをして俺の耳元に口を持ってくる美月。
美月「私のことも食べてみませんか。真夏さんより美味しいかもしれませんよ?」
そう言って俺から離れると、美月の言葉に呆気に取られている俺をニヤニヤしながらこちらを見る。
美月「サークルの後、乃木駅の横のカフェに来てください。待ってるんで。あ、真夏さんには適当に理由つけて今日は帰らないって言っといてくださいね!」
まるで最初から決めていたセリフかのようにすらすらと話すと、背を向けてサークルに向かい出す。
晃樹「おい待て。俺は行くとは言ってないぞ、そんな勝手に…」
美月が振り向く。
美月「えー、じゃあ先輩が絶対に来るような情報教えときますね?実は私、今日安全日なんです。だからもし…。ま、そういう事です!」
走り去っていく美月。
その時俺は、自分の心が揺れていることに驚いていた。