第7話
麻「はい、これが裕太くんのね!」
裕「ありがと。楽しみ(笑」
俺たちは今、中庭に数個置いてあるうちの1番左端のベンチに腰掛けている。
俺たち以外にもカップルと思わしき男女が1組居るが、おそらく1年生だろう。同級生や先輩じゃなさそうだ。とりあえず顔見知りでなくて良かった。
裕「じゃあ開けるよ?」
麻「うん!」
パカッ
中をみると、おかずは玉子焼きにウインナーなど、定番メニューが並んでいるが、どれも美味しそうだ。ご飯も、母さんみたいに白米敷いて上からふりかけではなく、おにぎりにしてくれている。
裕「おー、美味そう!これ全部麻衣が作ったんだよね」
麻「うん(照 でも、ありきたりなのばっかりでごめんね」
裕「全然そんなことないよ。じゃあ、いただきます!どれ1番に食べて欲しいとかある?」
麻「あ、えっとね。肉じゃが…かな。お母さんが、男の子は肉じゃが喜ぶから作りなさい!って(笑」
裕「確かに肉じゃがは好きだなぁー、さすがお母さん(笑 あ、てことはお母さんにも俺のこと言ったんだ」
麻「初めて出来た彼氏だから嬉しくて。ダメだったかな…?」
ん?ん?ん?んんん?初めて…?
昨日の行動が結構大胆だったからてっきり慣れてるかと思ってたぞ。
いや、それ以前に麻衣クラスの女の子が高2まで彼氏居なかったとかありえるのか?
まぁ、美彩も居たことないし、ありえなくはないのか。
いやでも、世間的には可愛い女の子は大抵みんな彼氏が居て、あんなことやこんなことを経験してて…。
麻「裕太くん?お母さんに言ったのなんかまずかったかな?」
ふと我に帰ると、麻衣が心配そうに俺の顔を覗き込んでいる。
裕「いや、全然大丈夫。それより、せっかくだから肉じゃがいただくね?」
余計な考え事を一度捨てて、箸で肉じゃがを口に入れる。
麻「…どうかな?」
裕「うん、美味い!最高!」
俺が笑顔で言うと、麻衣はホッとした表情を見せる。
麻「良かったぁ…。あ、箸貸して!夢だったんだ、彼氏にあーんするの(照」
そう言って恥ずかしそうに俺から箸を奪う麻衣。
俺も恥ずかしい…。というか、マジで朝妄想してた事が次々現実化していって怖いわ。
麻衣が弁当を見回す。
麻「うーん、じゃあ玉子焼きにしよっか!裕太くん、はい、あーん♡」
裕「あーん…うん、これも美味い!麻衣は料理もできるんだね」
麻「そんなことないよ。でも、前に裕太くん、料理ができる女の子はいいなって思うって言ってたでしょ?…だから、練習したの。いつか、裕太くんの彼女になった時に、美味しい料理食べて貰えるようにって…(照」
俺は昔から料理とか裁縫とか、そういうのが出来る女子に惚れやすい。家庭科の授業とかでささっとこなす女子とか。
まだ麻衣と友達になって少しくらいの時に、確かにそんな話をした記憶はある。てことは、あの頃から俺を…。
裕「そうだったんだ…。俺のために、か…(照 ありがとう。でもそれ言ったの、友達になって結構最初の方じゃなかったっけ?その頃から俺のこと…」
俺の言葉に、少し考えるような表情を浮かべる麻衣。
そして口を開いた。
麻「もっと前だよ。1年生の2学期頃からかな…裕太くんが気になりだしたの」
え?そんな前から?
1年生の頃、俺と麻衣に接点なんかなかったけどな…。どっかで関わってたっけ?
俺が頭の中で考えていることを察したのか、麻衣がふふっと笑って言う。
麻「美彩がね…」