第3話
美「でもさ、良い奴だよね」
バスに乗り込み、空いた席に隣同士で座った。バスが発車すると、美彩が照れ臭そうに俯き気味に言う。
裕「ん?俺のこと?」
美「裕太のことに決まってんじゃん笑この流れで他に誰のこと言うのよバカ!照」
美彩が僅かに照れているのが伝わってきて、こっちまで照れてしまう。
裕「なんか美彩に褒められたの久しぶりだな照」
美「別に?なんか1つくらい良いとこ言ってあげないと可哀想かなって思っただけだし!」
美彩は自分に言い聞かせるように言うと、裕太の方を向き直した。
美「で、裕太は何褒めてくれるの?」
裕「え、なにそれ」
美「だからぁ、私の良いところ言いなさいって事だよ。沢山あるでしょ?可愛いとか、美人とか、綺麗とか…」
裕「それほぼ全部一緒じゃね?てか自分で言うんだそれを笑」
美彩は自分で言っといて恥ずかしそうに頬を赤らめつつも、目はしっかりと俺を見つめている。
俺は少しだけ大きく息を吸って言う。
裕「でも確かに、美彩はすげー可愛いと思う。正直言って幼馴染じゃなかったら、俺なんかがこうやって一緒に登校するなんてあり得ないっていうか、釣り合ってないっていうか…。高嶺の花で話すことすら出来ないかも…」
美「裕太、そんな風に思ってたの?照」
自分で言っておきながら、そんな世界を考えたら悲しくなる。小さい時から一緒だから意識したこともなかったけど、こうして今考えると、美彩と幼馴染で良かったと心の底から思えた。
何故か自然と涙が出そうになるのを堪え、敢えて笑顔を作り美彩を見て言う。
裕「はい、充分褒めたでしょ。もうこれで良い?」
美「要約すると、幼馴染であることに感謝するくらい可愛い女の子ってこと?笑」
美彩が今日2回目のいたずらっぽい笑顔で聞いてくる。
裕「そういうことかな…。」
俺が素直に頷くと、ちょうど学校の最寄りのバス停に着いた。
美「降りよっか?」
裕「…おう!」
もう着いたか。なんか今日はもう少し一緒に乗ってたかったなー。