もし主人公が女テニの部員だったらT
E練習試合 ~シングルス3
坂道学園と欅中、両校のギャラリーが見守る中、
始まったシングルス3。

平手・山下「よろしくおねがいします!」
お互いの学校の有望な若手同士の対戦。
トスの結果、平手からのサーブで始まることとなったこの試合。

笑顔で挨拶をかわし、ベースラインに付いたときに
その雰囲気が一変した。

山下「(なんていうか・・・集中に入ったのかな?)」
平手「んっ!!」


鋭い直線のサーブが山下のバックハンドを襲う。
思いもよらない速さと威力で思わず当てて返すだけに
なってしまった。



平手「はいっ!!」
山下「(やられたっ)」

浅いロブになってしまった球を
ジャンピングスマッシュで打ち下ろした平手。
山下の経っているベースライン反対側にきっちり決めて先制した。

山下「(一年生レベルじゃない!)」
この1ポイントでかなりの実力者と察した山下。
ラケットを握るグリップに力を入れ、レシーブに備える。
山下「うあっ!!」



星野「タイミングばっちりだね!」
大園「美月いいぞー!」
次のサーブも山下のバックハンドを的確についてきたものだったが
父親譲りの綺麗なフォームで見事に返球して見せた。


平手「ふっ!」
山下の返球を軽くいなしローボレーで返球し、
サービスエリア内で構えをとる平手。
どうやらネットプレイを得意としているようだ。

山下「はいっ!」
ネットに付いた平手に臆することなく、
伸びのあるストロークを打つコム山下。
平手の足元を狙った打球を浮かせて返球してしまい、
ネットに詰めてきた山下がショートクロスに流したボレーで1本返した。

平手「経験者?」
山下「そっちもでしょ(笑)」
平手も山下が普通の1年生のレベルではないと見抜いた様子。



長濱「あの山下ちゃんって子、お父さんが元プロやけん」
石森「だから上手いんだね、てちと互角な1年生なかなかいないもん」
長濱「1回戦目から長引きそうたい」



ダンスのような流れるような身のこなしを得意とする平手と
1本1本狙いすました伸びのあるストロークを得意とする山下。
もし仮にダブルスを組んでいたとしたら、
かなり相性のいいペアだったに違いない。



ゲームカウント山下2−2平手
山下「(かなりしぶといなあ・・・)」
平手のハーフボレー中心の攻撃に疲れを見せ始める山下。
相手コートの奥から返球されるのに比べて当然、
自分が打ってから打球が返ってくるまでの時間が短い。


十分な構えができていないまま返球することもあり、
それによる打ち損じを狙われているようだ。



平手「(またホップしてる??いや、伸びてくる)」
平手のほうも癖のある山下の打球に手を焼いている様子。
プロ野球選手のノビのあるストレートのように、
手元で打球が浮き上がるようにみえる。


普通ならそのままアウトになりそうだが、
ベースライン手前できっちり落ちてコートに入るのが曲者。



与田「2人とも頑固だね、姿勢を一貫しているというか」
星野「我慢比べって感じじゃない?」
大園「折れたら負け的な?」


ゲームカウント山下4−4平手
早坂「接戦だねー。2人ともいつもより消耗してる感じはするけど」
織田「まあ、お互いの周りの1年生と比べて強い1年生と戦ってるからねー
   でも楽しいんじゃない?」
平手「んっ!」
山下「(サーブの回転が違う!これ逆回転だ!!)はいっ!」
平手(返された?やっぱりレベル違うこの子)」



ゲーム終盤、隠し持っていたツイストサーブを打ち込んできた平手。
まだ練習中のものだけあって、山下はなんとか所見で返球。
威力・回転ともにフラットには劣るが、不意をつくには十分だった。



平手「はいっ!」
*バシッ・・・
バックボレーで力をいなし返球。
ネットすれすれに落とし、ポイントを取って見せた。
山下「ストップボレーまでできるの??本当に器用」

星野「これ見ちゃうと私当分レギュラーなれる気がしない(笑)」
大園「乱打ですらできる自信ない・・・」
雰囲気は初々しいが、試合内容の高さがうかがえる。


山下「じゃあ、こっちも・・・!」
平手「(えっ!?)」
平手のツイストサーブのバウンド方向で待ち構える山下。
跳ね上がってきた打球に強烈な横回転をかけると、
その打球は大きなカーブを描き、相手とは逆の右コーナーに逃げて行った。


平手「(バギーホイップショット・・・)」


米谷「あの子なんかすごいの打っちゃったけど・・・」
早坂「かなりの回転量だね、あれ。あれだけ曲がったら
   ネットプレイはやりづらいよ」
テ〇スの王子様に出てくるキャラクター並みの曲がる打球に、
思わずその場から動けなかった平手。



長濱「隠し持ってたものは、相手のほうが強烈だったばい。
   これでてちがネットに出なくなっちゃったら、その時はね?」
小池「警戒しちゃうと思うなー、あれ見ると」


ゲームカウント山下5−4平手


勢いで相手のサービスゲームをブレークした山下。
チェンジコートの際の1分休憩に入る。

土田「山下あんなの持ってたの?」
山下「いや、たまたま思い付きでやってみたら、思いのほか上手くいきました」
土田「それあれば相手は前に出てこられないから、
   左右に振り回しちゃいな」
山下「りょうかいです!」


その後、土田のアドバイス通り曲がる打球を利用して
一気に主導権を握った山下。
試合はそのまま山下が押し切り、ゲームカウント6−4で勝利。



平手「参ったよ、初めて一年生に負けた(笑)
   てかなんでそんなに強くてレギュラーじゃなかったの??」
山下「てか西野さん倒した「てち」こそヤバいでしょ、
   私負けたのにどうやったの・・」

試合が終わってコートから去っても、
水道でキャッキャッ話す2人。
やはり1年生なのか若々しい雰囲気だ。


長濱「てちで負けるのは計算外だった・・・」
菅井「強い同級生とやれたことはいい経験だよー。
   てかほんと強いねあの子」


次の試合ダブルス2は・・・
伊藤かりん(2年)・加藤史帆(1年)VS石森虹花(2年)・小池美波(2年)


クッキー ( 2018/01/22(月) 04:55 )