飛鳥
01 露見
オレはとあるテレビ局で清掃スタッフをしている。このテレビ局には某有名アイドルグループの冠番組を収録するスタジオがあり、まだ働きはじめて時間は経っていないが、よくメンバーに出会うことがあった。会釈してくれたり挨拶してくれたり礼儀正しい子ばかりで、何より皆可愛い。横を通ったときに鼻をくすぐるシャンプーや香水の甘い匂いを思い出しながら夜に1人寂しくすることもしょっちゅうだ。
(なんかこの前一緒に飲んだ友達がグループのjkメンバーとパパ活したとか言ってたけど、まあ別人だろうな…あんな可愛い子の誰かと一晩中パコパコしたいもんだ)
そんなつまらないことを考えながら今日もほとんど誰もいない朝の館内の清掃をしていると、ある部屋から声が聞こえてきた。近づくと女の声らしい。
(確かこの部屋って…)
扉にかかった札を確認するとやはりそうだ、例のアイドルグループの控え室だった。
(こんな朝早くに誰が…?)
盗み聴きするのも気が引けたが、好奇心が勝る。扉に耳を近づけると想像もしていなかった声が耳に入ってきた。
?「はぁ…♡あぁんっ♡」
(これ…もしかして…?)
扉をそっと開けてみると、こちらに背中を向ける格好で机の角にスカート越しに股をこすりつけている姿が見えた。
(あれって…飛鳥ちゃん…だよな?)
後ろ姿なので定かではないが、グループのエース、飛鳥のように思われた。飛鳥はグループでもトップを争う可愛さだが、出会っても会釈もせずに通り過ぎて行くことが多かった。クールなのか人見知りなのか、単に男嫌いなのかもしれない。そんな子が誰もいない控え室で乱れているところにオレは目が釘付けだった。
あ「あぁっ♡きもちいっ♡みづきぃ♡」
そこが普段その子の座る位置なのかは知らないが、一心に腰を振りながら後輩の名をつぶやいている。
 ガチャッ
腰の動きが早くなってきたところでオレはわざと音が鳴るようにドアノブを下げた。
驚きでビクッと身体を震わせた後、振り返った飛鳥はオレを認識して一瞬狼狽したようだったがすぐにいつも廊下ですれ違う時のようなぶっきらぼうな顔になった。
「飛鳥ちゃんだよね?何してたの?」
あ「あの…ここメンバーの控え室なんですけど」
開き直るかのような飛鳥の返答にオレはスマホの画面を見せた。ドアの隙間から覗いていたときに撮っておいたのだ。
「何もなかったフリしてるけど、ちょっと前から見てたんだよね。これバレたら困るよねえ」
あ「ふざけたこと言わないでください」
「そうだ、名前呼んでた美月ちゃんに見せたらどう思うかなあ… 尊敬してた先輩がこんな淫乱だって知ったらガッカリするだろうなあ…」
あ「やめてください、困ります」
「ここはお願いするとこじゃないの?偉そうに言ってたらほんとにネットとかに流しちゃうよ?」
あ「ごめんなさい、許してください」
形式上の謝罪だけする飛鳥。態度や言葉から見て男嫌いは本当のようだった。オレは男嫌いの飛鳥が男に屈するところを見たくなった。
「まあ飛鳥ちゃんの態度次第だよな」
あ「どうするつもりですか」
「アイドルのこんなスキャンダル握ったんだから、このままヤラせろ、とか言いたいとこだけどオレもそこまで酷じゃない。動画を消すかどうかチャレンジをしてもらおうかな」
あ「チャレンジ?」
「今から1時間オレに何されても飛鳥ちゃんがイカなかったら動画を消してオレもこのことは全部忘れる。もしイッちゃったら、もちろん動画は残すし、これからも動画をネタに色々してもらうことになる」
あ「イカなかったらって…そんなの許せるわけないですよ」
「決定権はオレにあるから。なんだ、負けるのが怖いのか?」
あ「こんな男に何されても感じるわけないじゃない」
「1時間後なんて言ってるかが楽しみだな」
強情な女が堕ちた時ほど興奮するものはない。オスの本能に火がついていた。

ベルフェゴール ( 2021/05/22(土) 01:07 )