1.警視庁捜査一課の3人
最初の事件
真面目に生きてる奴が馬鹿を見る。そんな世の中は狂っている。いじめっ子はバレてもその場での叱責だけで終わり、いじめられた側は一生癒えない傷を負って生き続けなければならない。戦争を始める人間は決して戦場には出ずに暖かい部屋の中で笑い、戦争を憎む人達が戦場で自らの命を懸けて戦うのだ。それなら責めて、法の下で裁ける人間は全員裁かれるべきだ。そんな強い思いを持っていたからこそ山下美月は刑事になった。
キャリア組ではない彼女だが、強い信念からか優秀な成果を上げ、同年代のキャリア組と同等階級まで早々に昇格し、今は警視庁捜査一課の警部になっている。
「山下さん、おはよう」
「おはようございます〜」
にこりと笑って挨拶を返す。ドラマの世界にしかこんな刑事はいないだろうと思うほど、美月のルックスは可愛らしく、男性刑事からの人気が高い。これだけでも凄いが、美月同様に可愛い刑事がもう1人。
「山、おはよう〜」
「おはようございます!」
齋藤飛鳥、同じく捜査一課の警部で美月の1年先輩だ。美月が入ってくるまではこの警視庁捜査一課の男達の注目は飛鳥に集まっていたほどの美貌である。現在は飛鳥派と美月派で喧嘩が行われることもあるらしいが当の本人たちはそんなことは気にしていない。公私ともに仲がいいという訳でもないが、飛鳥は可愛い女の後輩が出来たと喜び、美月は頼れる女の先輩がいると心強い。加えて共に優秀であり、信頼関係が築けている。そのくらい2人は捜査一課の中でも群を抜いて成果を上げているのだが、たった1人それよりも優れた刑事がいる。
「飛鳥、昨日逮捕した篠田の取調べ頼んだよ」
「うん、わかってる」
飛鳥の同期の石橋豊、目が細く鋭い眼光とどこか冷たい空気のあるこの男だが、あまり見せないだけで紳士的で優しいことを飛鳥も美月もよく知っている。外に出ればさりげなく道路側を歩くし、長丁場になり気が滅入ってきたくらいのタイミングで冷たい缶コーヒーをそっと差し出すこともある。器用なタイプではないので勘違いされがちだが、見た目ほど悪い男ではない。
「山下さん、篠田の事件のことで気になってることがあるんだけど、一緒に来てくれるか?」
「分かりました、同行します」
そう返した山下の顔は緊張感のあるものだったが、少しだけどこか嬉しそうに緩んでいるようにも見えた。

■筆者メッセージ
拙い文章ですが頑張りますので温かく見守っていただければと思っております。よろしくお願い致します。
ブラッキー ( 2022/11/13(日) 17:04 )