無茶という名の作戦
奏翔は、友香からポジションの説明を受けた時から、ある作戦が出来上がっていた。
初めての部活で、初めてのマネージャー、そして初めて指揮官をやる奴が何を無茶してる?って言われそうな気はするが、奏翔は奏翔なりにバスケの試合の構造などを勉強していた。
友香、茜、友梨奈、美愉、瑞穂、愛佳、理佐、菜緒もそれぞれの得意な部分、不得手な部分を練習し続け、明日が桜蘭高校との練習試合という、プレッシャーもある中、友香が女性の先生と共に全員を呼んだ。
友香「みんなお疲れ様。今日はこれで終わりなのと、ちょっと監督にどんな作戦か聞こうじゃん?
っと、その前にべりか先生も挨拶したいって言ってるから…先生、OK♪」
梨加「この部活の顧問の渡辺梨加です。
うちは、監督とかより応援の方が好きだから、加藤くん入部ありがとう。頑張ってね!
小坂さんも…同じことしか言えないや…」
梨加は最初はちゃんとテキパキと話していたが、途中で声のトーンが落ちると友香にバトンタッチするように目を向けた。
友香「まぁ、この人が顧問の先生ってことで、奏翔くん、教えてくれるかな?
どうするつもり?」
友香は、本当に楽しみなのかキラキラとした笑顔で奏翔を見つめた。
他のみんなもそれぞれ違う反応を見せながらも奏翔を振り向いた。
奏翔「えっと…じゃあ…作戦は…と言うと、この紙を見てください。この紙に書いてあるメンバーが最初に出るメンバーです。」
奏翔がみんなに見えるように出した紙には
【PG 鈴本先輩
SG 平手先輩
SF 志田先輩
PF 小坂さん
C 守屋先輩 】
と書かれており理佐と友香は、へぇ〜なんか不思議な感じというような表情をしたが、瑞穂は明らかに目付きを悪くした。
奏翔「そして、前半の第1Q、第2Q後半の第3Qまでは土生先輩には試合に出ずに、ベンチにいてもらいます。」
最後の言葉を聞いた時、奏翔以外の部員は不安げに瑞穂に目を向けたが、遅かった。
瑞穂「なんで、うちは最後だけ?
ふざけんなよ。そんなにうちの気を引きたい?それともうちが本当に嫌いなの?」
瑞穂の怒った顔に内心ではごめんなさいと手を合わせていたが、負けじと大きな声で口を開いた。
奏翔「土生先輩には申し訳ないですけど…これは、ちゃんとした作戦なんで最後まで聞いてください。
終盤の第4Qを終わらせる条件として2つ。
1つは土生先輩を主体にして得点を取っていく。
2つは試合に負ける、勝つにしろ試合終了直前は土生先輩がダンクシュートを決める。
これが、僕の作戦です。勝つため、では無く相手に自分たちの力を見せつけるための作戦にしようと思ったらこれしかなかったんです。」
誰も、何も言えずに口を大きく開いて奏翔を見つめていたが、瑞穂は、大きな声を上げて笑いだし、美愉は、ニヤッと笑って口を開いた。
美愉「たしかに面白い作戦だね。
前半で愛佳と守屋先輩、後半で理佐とかみんなで得点を稼いだら瑞穂に勢いに乗ってもらうってわけか。」
美愉の言葉に友香もクスッと笑うと、奏翔を見つめて
友香「ちょっと面白いかも。
明日の結果がどうなるにしろ、明日に備えて今日は帰って休もうか?
明日はここに8時集合ね!桜蘭高校には10時に着けばいいからさ。それじゃ解散!」