花言葉〜恋していいですか?〜







小説トップ
July
21 本心(男子side)
しばらく部屋の天井をボンヤリと眺めて気づく。終わってしまったのならもう仕方がない、諦めをつけて僕はそのまま部屋を出ようとした。
少し隙間から空いた扉からは湿った空気が吹き出ていると同時に人の気配がした。先程の様子を見られてしまっては面倒くさいことになってしまう。そっと扉を開けると足元に蹲っている人物がいた。少しの冷や汗と焦りを抑えながら、その場にしゃがみ込む。



「飛鳥さん?」



呼びかけても返事がない。まさかこんな場所で寝るとはいったい何をしていたのだ。手洗いにしては場所から遠すぎるし。違和感を感じながらも、彼女を突いてはみるものの反応が無く、ただ虚しい時間が流れていた。

らちが明かないと思い、僕は起こさないように蹲った彼女の体をゆっくりとほどき持ち上げた。みなみさんとは違って彼女の身体は細くて軽くて本当に抱えているかと疑ってしまう。



「もし起きてたら話をしたかったんだけどな。」



暗闇のせいなのかそれとも彼女がスヤスヤと寝顔を見ているせいなのか思ったことが引っ掛かることなく素直に喉から出てくる。それは自分でもおかしいくらいだった。
そっとタオルケットに包まっているみなみさんの隣に飛鳥さんを布団の上にのせた。



「今こうやって話をしているのが不思議だよ。4月なんて飛鳥さんに変態って言われてさ。」



振り返ってみればこれが始まりなのだろう。これが出会いだとおもうと可笑しくてたまらない。



「5月だっけ?ようやく話せるようになったのは。疲れちゃったけどあの時は楽しかったな。」



起きる気配を見せないまま僕の一人しゃべりが続いてしまう。一体何が言いたいのだろうか、ただその目的もないまま三人しかいないこの空間に僕だけの声が聞こえた。寝顔を眺めながらみなみさんとは何か違う感情を抱いてしまう。



「6月はえーと。あっ、スーパーで買い物をしたんだっけ。」



あぁ、そうか。あの頃からかこんな感情を抱いたのは。もっと自分に素直になればよかったんだ。彼氏がいるなんて気持ちを伝えるだけなのに対して関係ないことか。心の底にたまっていた気持ちがホロリと出てくる。



「ようやく自信をもって君が好きと言えるようになったみたいです。好きですよ。飛鳥さん。」



一瞬だけ目があったように感じて心臓の鼓動が早くなってくる。もしかしたら聞こえてしまったのではと臆病な自分が心の隅で顔を出しては僕をからかってくる。彼女の髪を整えながら暗闇に包まれる寝室で今度はいつ本人に気持ちを伝えようか考える僕だった。


■筆者メッセージ
こんばんは。
沢山の拍手メッセージありがとうございます。
章はここで終わりにします。更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
もう少し工夫して皆さんに楽しんでいただけるよう努力しますのでこれからもよろしくお願いいたします。

返信メッセージ
名無しさん
星野さんが仕掛けたことや西野教授に関してはこの後に書く予定ですのでもう少しお待ちいただけるとありがたいです。楽しんでいただいてこちらとしてもうれしい限りです。

マッキー様さん
はじめまして。私自身努力はしているつもりではありますが中々結びつかずご満足いただけないようで申し訳ありません。少しでも良くなるように精進いたしますのよろしくお願いいたします。
桜鳥 ( 2017/07/15(土) 00:28 )