01 引き金(男子side)
クーラーが効く部屋の中で僕はアイスをかじりながら、夏休み前の難関と言われる期末テストの勉強に励んでいた。先月の中間は難なく逃れたのだが、今回に至っては西野教授から8割超えていないと夏休み中西野教授の手伝いという理不尽なペナルティがついている。
それに今回に至っては自分の事ばかりでなく、他の人の心配もしなければいけなかった。しかし、その押しかけてきた人数に雅晴は唖然としていた。
「生田先輩、これどーやって解くんですか。」
「生田。それ終わったら、堀の方も見てくれ。」
「まさくん。こっちもよろしくー。」
なぜ、こんなにも我が家にこんな人だかりができているのだろうか。遡る事一週間前になるが、この金土日で僕と橋本で二泊三日の勉強合宿をすることを約束していた。しかし、ある一人の発言が引き金となってこの僕と橋本にとって危険なテスト期間になろうとしていた。
「あの、生田先輩は今週末お時間ってありますか。」
昼の講義が終わり学部棟から出ようとした時、珍しく堀さんから声をかけられた。ずっと、僕のことを探していたのだろうか少し汗が額にかかっているのが分かる。
「橋本と勉強会するんだけど何かあった。」
「それなら、私も一緒に参加してもいいですか。」
彼女の言葉で大体のことが察することができた。彼女もまたテスト勉強の渦中にいるのだ。去年のことを思い出すとまさに地獄だったかもしれない。特に西野教授がまだ僕らになれていない頃、力加減も知らずに課題を出すものだから栄養ドリンクが常にテスト期間中に常備だったことが今でも記憶に焼き付いている。
堀に対してそのようなことがあるのだろうかと思ったが、もしもという心配が頭によぎった。
「いいよ。橋本もいるから二人で見てあげるよ。」
「ありがとうございます。じゃあ、詳しくは木曜日に。」
この後待ち合わせなのか彼女は約束を口で済ませるとそそくさ僕の目の前から消えていった。彼女のいた場所が一瞬涼しげに感じたのは気のせいだろうか。
学部棟の外に出ると6月の湿気に加えて暑さが猛威を振るっていた。特にこの時期はインドアな雅晴にとっては苦手な時期であった。そして、今日に限ってはなにか嫌な予感しかしてままならなかった。特に第六感といった能力は持ち合わせてないが、パンドラの箱を開いた音が聞こえてきた。