花言葉〜恋していいですか?〜







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May
31 帰り道(女子side)
帰り道を歩きながら今日の出来事を振り返る。一言でいえば、ドタバタだ。蘭世も楽しかったようで満足げに歩みを進めている。

「あのあとね、橋本先輩がゲームセンターでチンパンジーとゴリラの間みたいな人形をとってね。未央奈ちゃんにあげたんだけど。名前が面白くて。」

後ろを振り向くと未央奈の大きな人形が目に入る。何を思ったのか、名前はトルティーヤらしい。センスがなさ過ぎてついつい笑ってしまう。

「いつもムスッとしねーで笑ってれば、可愛いのにな。」

「それどーいうことですか。」

桜井先輩が後ろから野次を飛ばしてくる。両手には大量に買った画材をぶら下げていた。軽くにらみつけるとコラコラと橋本先輩が私の後ろ襟をつかむ。

「ちゃんと女の子らしくしてないと生田君に嫌われちゃうぞー。」

思わずハッっと表情が怯む。同時に顔に熱が集まっているのがわかった。してやったりと橋本先輩が勝ち誇った顔をする。この3人に弱点を握られているようで私は悔しくてたまらなかった。

「え。飛鳥ちゃん生田先輩のこと好きなの?」

「違うってば、好きじゃないってば。ただ、優しいなーって。」

「ほんとにそうかね。お前、意外にわかりやすいぞ。まあ、それに気づかないあいつも馬鹿だけど。」

後ろを振り向くとなにやら橋本先輩と生田先輩が道の隅でこそこそと何かを話している。生田先輩は何やら険しい顔をしていた。みなみの顔を見ると何故か思いつめた表情で深くため息を吐いていた。

自分のしたことに不安を覚える。そうだ、みなみは生田先輩のこと好きなんだ。心臓がキュウっと締め付けられる感覚に襲われる。

「ごめん。先に歩いててくれても良かったのに。」

「男二人で隅でこそこそやってたら気になんだろ。」

男二人の会話が飛び交う中、これ以降飛鳥が口を開くことはなかった。蘭世は気を使ったのか黙りながらも飛鳥のそばを歩く。

駅に着き解散の言葉が告げられる。みんなが帰路につく中、私はせめて一言だけでも今日のお礼を言おうと生田先輩のもとへ行こうする。

「みなみさん、ちょっと待って。」

彼の言葉に私は足を止める。そっか、そうだよね。やっぱり、私みたいな人よりみなみみたいな女の子のほうがいいよね。

飛鳥は雅晴に向っていた方向と逆の方向に向かって歩き出す。もう用はなくなった、そう思ったし、そう思うことしかできなかった。

駅のホームでベンチに座り今日一緒に買った参考書を広げる。文章を読もうとすると今日の出来事がページをめくるたびに思い出していく。それがなんだか嫌で夜空を見上げる。
電車が来たのか風が急に強くなる。風で自然とページがパラパラとめくられていく。

「嘘つき。全然、わかんないじゃん。この参考書。」


■筆者メッセージ
こんばんは。
拍手メッセージありがとうございます。
これにて二章は終わりです。ここまで読んでくれた方ありがとうございます。
次は番外編を公開しますが、一話なのに非常に長いです。
番外編はMayの上にあるので是非とも見てください。

また、三章は多少時間をいただいて更新しますが来週中には出していきたいと思います。
桜鳥 ( 2016/08/25(木) 21:00 )