花言葉〜恋していいですか?〜







小説トップ
May
29 参考書(女子side)
この店に置いてある大体の本を眺め終わり生田先輩を探す。本棚と本棚の間を横切りながら歩いていると大学の参考書コーナーで参考書をパラパラと読んでいた。

「何を読んでいるんですか。」

気になり背伸びをしながら本の中を覗き込もうとする。背伸びをしていることに気付いたのか私の目線の高さまで本を下ろしてくれる。しかし、気遣ってくれたのはいいのだが書いてある内容に思わず私は拒否反応が出てしまう。先ほどまで向き合っていた数式とは別の種類の数式が出てきたことに嫌悪感を抱く。

「うえ、さっき勉強したのにまだそんな本読むんですか。」

「人の趣味に嫌味をつけないでくれるかな。僕はこういうのが好きなの。」

我慢ができず思わず本音を漏らす。しかし、彼は怒ることもせずただ平然と本を読み漁る。昔の彼氏を思い出す。些細なことで本音をポロリと言ったことがある、気を使わないでありのままを見せたかった。しかし、それは喧嘩の発端に成り変わってしまった。

生田先輩はいったい何を考えているのだろう。私も少しではあるが近づいてみたい。知らず知らずのうちに読めそうな参考書を探していた。

「齋藤さんは何をそんなきょろきょろしてるの?」

「自分でもできる参考書を探してるんです。」
私は目の前にある参考書をとってぱらぱらとめくってみる。しかしながら、書いてある文字がちんぷんかんぷんですぐに本を閉じる。今度はまたすぐ隣の本に手を伸ばす。しかし、どんなものがいい参考書なのかわからなかった。

ひたすら選んでいるときに生田先輩が私の様子を見て楽しんでいた。人がこんなに頑張って気持ちを知ろうとしているのに呑気にと、私は多少苛ついていた。

「また馬鹿にでもしてるんですか。どうせ、馬鹿ですよ。理科が嫌いですよ。」

思わず口調が強くなる。さすがの生田先輩も困った様子を見せていた。私は意地でも見つけようと再び本棚と向き合う。今度、バイトに行った時でももう少しいいやつ探してやる。

しかし、気になってしまうのか生田先輩のほうをちらりと見る。まったく気にしていないのかはたまた気を使っているのか彼は違う本を読んでいた。

少しは謝るということをしないのだろうか。そういう素振りも見せないまま刻々と時が過ぎていく。ふくらはぎにひりひりと痛みが出てき始めた頃、肩にぽんぽんと感触が伝わる。

また、馬鹿にしにきたのか。そう思って振り返る。生田先輩は何か言いたそうだが口に出せないでいることに余計にじれったさを感じた。

「なんですか。なんか様ですか。」

「ごめんってば。いや、まず齋藤さんまったくわからないならこっちやりな。」

生田先輩は私のすぐ頭上の棚から一冊の本を取り出し、私に渡してきた。手に取りぱらぱらとページをめくりあげていく。先ほどの文字とは打って変わってイラスト付きで読みやすい。

「もし、もしだよ。わからなかったら解説するよ。」

困った顔をしながらも気を使ってくれているのが言葉で伝わってくる。

「いいんですか?迷惑じゃないですか?」

飛鳥は先ほどまでの苛立ちを忘れ、本を握ったまま雅晴に尋ねる。雅晴は笑顔でうなづいてくれた。飛鳥の心の中でわくわく感が生まれる。

「じゃあ、これ買います。うわっ。」

急いでレジ向かおうと立ち上がったがずっとしゃがんでいたせいか足がしびれていて私はきれいにバランスを崩す。何とか踏ん張ろうとした。が努力むなしく倒れこんでいく。

倒れた先は幸か不幸か彼の胸の中だった。しかし、それに気づくのは倒れてから数秒のこと。

「うわっ、ごめんなさい。しびれてしまってすぐ離れますから。」

慌てて離れようとするも、しびれがまだ取れない。すぐに弁解しようと、上見ると意外にお互いの顔の距離が近くてさらに慌てる。

ゆっくりと体勢を立て直し、二人で呼吸を整える。生田先輩の顔を見るとバツが悪そうな顔をしている。背後のほうで何か視線が突き刺さるかのように感じる。

「あらあら、お二人さん。随分と仲がよろしくて。」

聞き覚えのある声。私は怖くなって振り返ることなく、ただこの場をどうにかしてほしいと生田先輩に心で願うばかりであった。


■筆者メッセージ
こんばんは。
たくさんの拍手メッセージありがとうございます。工事中を先程見たのですが、思ったよりも企画が成り立っていたので安心しました。
これからあれ使っていきたいですね。チャイティーヨって(笑)

返信メッセージ

Mさん
ありがとうございます。正直、脇役で出せば少し落ち着くのかなと思ったら甘く見てました(笑)登場人物はおっしゃる通りですね。あまり、人だし過ぎると大人数の表現は難しくなるので今くらいが一番書きやすいです。脇役とかでちょいちょい出して行きたいですね。あと、番外編にも(笑)
桜鳥 ( 2016/08/23(火) 18:57 )