24 勉強会 (男子side)
かれこれ一時間が経とうとしていた。齋藤さんは苦しそうな表情を見せるも、簡単なところをどんどんと埋めていっていた。その一方で僕はというと。
「だめだ、これもちがうな。」
西野教授がだしたレポートのうちのひとつに苦戦していた。
「生田先輩。大丈夫ですか?すごい怖い顔してますよ。」
飛鳥は気をつかっているのか心配そうな目で雅晴を見つめる。しかし、雅晴はひたすらペンを走らせながら数々の数式を展開していった。
相変わらずあの人は意地悪が好きだな。西野教授のことを頭に浮かばせながら僕はひたすら解き方をつらつらと並べていく。空腹のせいなのか頭も回らなくなってきて集中力が乱れてきている。
すると雅晴の目の前に突然リング状の物体が現れた。しかし、その正体がドーナッツであることはすぐにわかった。
「お昼食べてないんですよね。これ、食べてください。」
「ん?これって確かさっき食べてたやつだよね。」
小さな手にのっていたドーナッツをまじまじと眺めながら齋藤さんに問いかける。彼女は無言のまま小さくコクリと頷く。一体どこにしまってたのだろうか疑問に思いながら僕はドーナッツを手にする。
「ありがとう、齋藤さん。」
雅晴は飛鳥に対し一言御礼を言い、口をつけようとするがふと目が合う。
「そんなにみられると食べにくいんだけど。もしかして、食べたいの?」
彼女は一瞬驚きながらも俯きながら、もじもじとする。視線に耐えられなくなり齋藤さんに半分ドーナッツを差し出すと彼女は多少呆れたような表情をみせたのだが僕が気になることはなかった。
二人で黙々とドーナッツを頬張りながらペンを進めていく。食べたおかげもあるか頭が回っているのが実感できる。沈黙の中、ようやく問題が解けた時。
「生田先輩は気になっている人とか付き合っている人はいないんですか。」
一息をつこうとしていた矢先、この質問だ。今日で二回目となるこの質問にぼくは飽き飽きしていた。人というのは出会った矢先この質問だからな。
「蘭世に聞いてないの?僕は恋愛に対して無縁っていえばいいのか興味がないのかな。ほら、こんな人好きになる人いないでしょ。」
せめて、橋本に生まれ変わっていたのなら話は別になるんだろうなと思いながら僕は否定をした。そういえば最近、ドキドキしたのはいつのことだろう。紙コップに入った残り少ない水を一気に飲み干す。