18 落とし物 Part1 (男子side)
先に食べててと橋本達に促され黙々と堀と星野が食べている最中、僕は自分のポケットに違和感を覚える。やばい財布落としたみたい。
「ごめん。みなみさん、堀さん。僕ちょっと、財布落としたから探してくるね。」
「なら私も探しますよ。」
有り難いがさすがにこれ以上手伝ってもらうわけにもいけない。雅晴は大丈夫とだけ返し、急いで財布を探しにもとの道を辿っていった。ドーナッツの店まではそこまで距離がないため行くのは容易であった。
左右見渡すがやはり財布が見当たらない。ひょっとして拾われてそのまま持っていかれてしまったのかと半ばあきらめ状態で席に戻ることにした。すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「あのお探しものはこれですか?」
振り返るとそこには僕の財布を持っていた齋藤さんがたっていた。思わぬ人からの声がけに僕は緊張して固まってしまう。彼女は背伸びをしながらあのーと手を僕の顔の前にちらつかせる。
「あ、ありがとう。齋藤さん。」
やっと出た言葉がなんだかぎこちなさ過ぎて自分で嫌になってくる。星野さんといいこんなことになるなら高校時代にもう少し友達付き合いよくしておけば良かったと今更ながら後悔していた。
「齋藤さんはもうお昼ご飯決まったの?」
「一応、みなみ達が買ったドーナッツがおいしそうだったんで今日はそれにしようかなって。」
「なら奢るよ。さっき、星野さん達にも奢ったし財布も拾ってくれたから。」
一瞬驚いた反応を見せた飛鳥だったが遠慮深げにはい。と言って、ドーナッツを選びに行った。レジの方に進むとチラリとこちらの方をどこか寂しそうな視線を向けてくる。
僕はそんな申し訳なさそうな態度をとる齋藤さんに少しでも気が楽になるように微笑みかける。会計を済ませて席に戻ろうとするが彼女は靴が歩きにくいのか必死に僕に追いつこうとする。なんだかその様子が健気でついつい彼女に歩幅を合わせてしまう。
数歩先に進んでは止まり、また進んでは止まる。
「あれ生田、飛鳥ちゃんと一緒だったの?」
「財布を店に忘れてたらたまたまその店に齋藤さんがいてくれて拾ってたんだ。」
まさかの二人に驚いた顔をする橋本に理由を説明し、席に戻るともうすでにみんな自分のものを買っていた。そういえば僕の分も買ってなかったな。