15 昼ごはん(男子side)
スマホの画面に通知が来ている。橋本達とモール内を歩いている途中、雅晴は内容を確認する。
『用が済んだから、キリのいいところでフードコートに来て。』
いったいなにしてたんだ。雅晴の中で変な妄想が浮かんだがどれも桜井の行動としては当てはまらないものだった。
「生田なにぼーっとしてんの。ぶつかるから気をつけろよ?」
「ごめん。いや、桜井から連絡来たから。キリのいいところでフードコートに来てだって。」
フードコートと聞いた瞬間に一瞬ビクつく堀。なぜなら、先程からお腹が鳴りすぎて服選びでも本人が気にしていた。
「もうそんな時間か。夢中になってると早いもんだね。」
「なんやかんやで、雅晴さんの服で時間がかかりましたね。」
僕の手には先程買った服が入った紙袋を握っていた。あれから、練習相手にしては真剣なほどに星野さんは選んでくれた。だけど、なぜか不機嫌になっていたのは僕の気のせいだったのだろうか。
ご飯と聞いて喜ぶ二人を尻目に橋本は冷静な顔で何かを考えている様子だった。雅晴の過去の経験からこの顔をしているときはこの後に何か計画を実行しようとしているのがわかる。
「橋本。道間違えてるよ。フードコートこっちだから。」
たまに考えすぎると橋本らしくない行動も起こす。
フードコートに着くや否や星野さんと堀さんはすぐさまご飯を選びに走り去っていった。橋本は先に桜井の元へ行くとのことで僕は二人についていくことにした。
「なに食べるか決まった?」
ショーケースにあるドーナッツを眺める二人に聞くが二人はまだ選んでいる途中のようで返事が返ってこなかった。その様子を雅晴は微笑ましく眺めていた。店の前にある広告を眺めながら待っていると決まったとの声が上がり、二人は会計をしようとしていた。
「今日は僕がごちそうするから、二人とも先に桜井のところに行ってて。」
「なんか悪いですよ。ちゃんと自分ではらいますから。」
「一応先輩の顔ってものがあるでしょ?あと、服選んでもらったお礼だよ。」
二人は申し訳なさそうにしていたが、冗談交じりな雅晴の言葉を聞いて納得をしてくれた。
しかし、いざ会計をしてみると堀の分だろうか異様に量が多いように見えた。
「未央奈の分重いですよね。手伝いますよ。」
気をつかって手伝いに戻ってきてくれたのか、星野さんが僕の手からプレートを一枚持ってくれた。
「ありがとう。みなみさん。」
僕はぎこちない下の名で彼女の名前を呼んだ。彼女はうれしかったのかいえいえとにこやかに返事をする。ふと考えてみると、いったいこのような光景は他人からどのように見られるのであろうか。友達。もしくは彼女。
彼女と考えたとき頭の中で飛鳥の顔が浮かぶ。
何故。さっきの出来事といい自分の身体に異変があるのではないかと言うくらい彼女を意識しているように感じる。
「こらバカップル。こっちだよ。」
手を挙げながら僕らを呼ぶ声を人混みの中から探すと人数分の席を確保してくれた桜井達の姿あった。星野さんを誘導しながらなんとかテーブルまでつく。
席につくと先程とは違った雰囲気の齋藤飛鳥が僕の目の前に座っていた。