14 Wデート?(女子side)
無言の時間が続く。いったいどこへ行くのだろう。唯々、私は桜井先輩について行くことしかできなかった。
「あのさ、齋藤には好きな人とはいるのか?」
この展開って告白だよね。昔よく告白されたときにこんなこと言われてたような。いや、だけど私桜井先輩と知り合ってそんなたってないからな。
告白の展開だと思った飛鳥は断るすべを見つけ出そうとするのだが、突然桜井の足が止まり飛鳥の方へ顔を近づける。
「その顔は気になる人はいるってことかな。」
突然の不敵な笑みで飛鳥は少し後ずさりをする。桜井は向きを振り向き直し、目的地なのか店へと入って行った。見上げるとそこには化粧品の名前がいくつも書かれている店だった。
「あの連れてきたい場所ってここですか。」
恐る恐る私はマスカラを手に取り色をまじまじと眺めている桜井先輩に尋ねてみる。すると桜井先輩は私の顔を見るや急に笑いはじめた。
「なに怯えてんだよ。別にお前に興味あるわけじゃねぇよ。」
まるで飛鳥の心を読んでいたかのように話し始める。だんだんと先程の勘違いが見透かされていたようで恥ずかしくなりなにも言い返すことができなかった。
「ただ今の齋藤の顔と服装が合わなすぎて朝からイライラしてたから連れてきた。」
ここまで直球に言われるといくら私でも傷つくんですけど。自信がないのは分かるが一応女の子というのに対して気をつかって欲しい。
「こだわりとか使ってるブランドってあるか?」
飛鳥の気持ちを察しているのか察してないのか桜井は淡々と話を進めていく。いったいこれからなにをするのだろうと疑問に思いながら彼の背中を見つめていた。
「これくらいでいいか。後は俺の持ってるのでなんとかなるかな。」
あたりを見回しながら独り言のように呟いていく。早々に会計を済ましたのだがなにやら桜井は店員と交渉しており、飛鳥は暇をもてあましている状態だった。
「こっちこい。とりあえず買うもの買ったからメイクするぞ。」
「え?誰がですか。」
「俺以外にこの場に誰がいるって言うんだよ。」
桜井先輩が店の中にある鏡台の前に私を座らせる。突然の発言に驚きを隠せない私は戸惑うばかりであった。まさか男の先輩にメイクされるなんてと不安がよぎる。すると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「桜井先輩のメイク久しぶりに見ますね。」
「蘭世付いてきたなら声くらい掛けろよ。」
呆れたように桜井が蘭世に注意をするのだが反省する素振りもなく蘭世は近くにあった椅子を引っ張ってきて飛鳥の隣へと座る。
「怖がんなくても大丈夫だよ。桜井先輩こう見えてモデルさんのメイクやったりしてるから。」
飛鳥は驚いて桜井の方を振り返ってみるとそこには先程までとは違う真剣な眼差しをした桜井の姿がうつっていた。