13 Wデート?(男子side)
「生田先輩試着しましたかー。終わったら出て来てください。」
扉の向こう側から星野さんの声が聞こえる。僕は渋々扉を開けると目の前には先程の蘭世と同じような表情をしている星野さんが目の前にいた。
「やっぱりこっちの方がいいですかね。今度こっち着てみてください。」
星野は何枚か持っている服のうちから一枚を雅晴に渡した。雅晴は渋々と服を受け取り試着室へと重い足取りで戻っていく。近くにいるはずの橋本に助けを求めようとしたが彼自身も服を物色している最中であった。
先程のことを思い返すとなぜこんなことになったんだろう。齋藤さんの試着が終わって結局両方買うことになったんだ。その後に桜井が齋藤さんとどっかに行くし、蘭世は気になるから尾行して。
「だからって何で今度は僕の服選びになってるんだろう。」
試着室の鏡の前の自分に問いかけるが返事がない。むしろどんどん落胆の表情がでてくる。
残された四人は急遽雅晴の服を買いに行こうと決めた。その結果が今に至る。
「雅晴先輩終わりましたかー。」
急かす星野さんの声が聞こえてくる。渡されたシャツを着て再び重い扉を開ける。後、何回この作業を繰り返すのだろうか、少し飽きてきた雅晴は考えていた。
「こらせっかくみなみちゃんが考えてくれてるのにそういう表情すんな。」
僕の嫌気がさしていた態度に橋本が察したのか僕のもとへとやってきて、耳元で呟く。
「みなみちゃん、ごめんね。生田あんまりファッションとか分からないから戸惑ってるんだよね。」
すかさず橋本が星野さんに笑顔でフォローをいれる。今の自分は星野さんにどううつってたんだろうな。だんだんと付き合わせてしまっていることに申し訳なく思ってきた。
「ごめんね、無理に付き合わせちゃって。こういうとこあんまり来ないもんだから分からなくてさ。」
急遽決まってしまったもんだし、迷惑もかけてられないから早めに切り上げてしまおう。そう思いながら口を開いた瞬間。
「私。好きな人の服を選んであげるのが夢なんですよね。だから、全然迷惑じゃないですよ。」
顔を赤らめて星野が呟く。星野の思わぬ発言に思わず橋本と堀も小さく驚いていた。
「そっかー、それならよかったよ。僕でよければいい練習相手になるから。」
そうか、服を選ぶ練習に付き合ってあげるのならそれはそれでいいかもな。向こうにもメリットがあるのなら。とそう思い、僕は星野さんの練習相手になる事を新たな目的として試着室に戻っていく。
「生田先輩は鈍感なんですかね。」
「違う。あれはただ単のばかだな。これに関してはどうしても偏差値が低すぎる。」
堀の言葉に橋本は頭をかきながら困り果てる。星野も頬を膨らまし、バカとぼそっと呟く。
三人は生田が意気揚々とはいっていった試着室の扉をじっと見つめているしかなかった。