06 目的地まで(女子side)
生田先輩達との集合までの間、私はとても憂鬱な時間を過ごしていた。蘭世は気をつかってくれてるのか持ってきたお菓子を私にくれようとする。しかし、そんなものを食べる程心に余裕がないのだ。
集合場所に飛鳥達が到着して5分後、橋本からの連絡が蘭世の方へときた。早々と返信する様子を見ながら飛鳥は内心焦りが出始めていた。
「そろそろ来るみたいだよー。」
「「はーい」」
緩く返事する2人に対し、飛鳥は極度の緊張で固まっていた。蘭世も様子を心配したらしく、一生懸命声をかけるも本人には届かない。連絡をしてまもなく雅晴達が改札を通り抜け集合場所へとやってきた。
「ごめんね、待たせちゃって。」
「大丈夫ですよ。今、寺田達も来たばっかりなんですから。」
生田先輩が遅れたことを私達に対して謝るのだが、私はどうしても生田先輩の顔が見れない。普段の大学生活とは違う雰囲気の服のせいなのか若々しく私の目には映っていた。
この時にも何回か会話をするチャンスがあったのだが、謝るということしか頭になかった私はただただ生田先輩に気付かれないように彼を見ているしかなかった。
「よし、じゃあ行くぞ。迷子になんなよ。」
「大学生なんだから迷子になるこたぁねえだろ。」
先導しはじめた橋本先輩に桜井先輩が突っ込みながら前へと進んでいく。私も蘭世とともにその先導について行った。後ろには生田先輩と未央奈とみなみがおり、なにやら雑談をしている様子。
「今日は飛鳥ちゃんの服買うんだよね?」
「そうですね。寺田達はその目的で来ましたから、あと生田先輩に謝りたい子がいますから。」
そう言って蘭世は私の頬を突っつきはじめたのだがすぐさま払いのけた。
「飛鳥ちゃんこのままだとみなみちゃんにとられちゃうよー。」
にやにやとしながら橋本先輩が言ってくるのだが、なにを意味しているのか私にはさっぱりと分からなかった。後ろの人たちに気付かれないように生田先輩を指さす。
後ろをちらりと振り返るとみなみが活き活きとしながら生田先輩と会話を交わしていた。
飛鳥は雅晴の笑顔が見えた瞬間急に前をむき直し、橋本達との会話に戻った。
「そんな急に名前で呼ばないでください。びっくりします。」
急にみなみの大きな声が聞こえて慌てて振り返る。他の3人も気付いたのか後ろを振り返った。みなみは顔を真っ赤にしながらうつむいている。
「生田またなんかしたのか?」
「なにもしてないってば、ただみなみさんの名前を呼んだだけだよ。」
「生田にしては珍しいな。女子の名前を下で呼ぶなんて、なにもうそんな関係なの?」
私は慌てながら弁解をする生田先輩をなんでこの人は誤解を生むことばかりするのだろう、
きっといい人なのにそう思いながらじっと見つめていた。