09 地図 Part2 (男子side)
飛鳥と入れ替わるように星野が配り終わったのかあまりの飲み物を持ってこちらへとやってきた。動きを見せる度に彼女から甘い香りが雅晴の鼻に通っていく。
「雅晴さん。コーラでいいですか?」
「大丈夫だよ。ありがとう、みなみさん。」
そう言って星野からコーラを受け取りキャップを開け一口飲む、その様子を星野はじっと見ている。雅晴は動揺して喉に炭酸が突き刺さり、むせそうになった。
「どうしたの?そんな見られるとなんか飲みにくいんだけど。」
「いや、みなみ炭酸飲んだことなくて。飲んでみたいなって。」
興味津々とみなみさんは子供のような瞳をしていたので僕はコーラを無言で差し出した。みなみさんは両手でコーラを持ち一気にコーラを口に含めた。その瞬間、様子が一変し暴れはじめた。
「&$#%$#!!」
「星野さん!落ち着いて、ゆっくり飲んで。」
炭酸で暴れる星野を肩を持ちながら雅晴はなだめていた。桜井も慌ててこっちへとやってきた。
「生田。なんで、星野暴れてんだよ。」
「炭酸飲むの初めてらしくて、一気に飲んじゃったんだよ。」
2人で星野が落ち着いて飲む様子を見守り、雅晴と桜井はその場ではき出さなかったという心配がなくなり安堵した。
「生田そろそろ行くルート決まりそうだから落ち着いたら橋本に声かけてくれ。」
桜井はそのまま橋本たちがいる地図の近くのベンチへと戻っていった。
「炭酸やっぱり合わないですね。喉が痛くて飲めませんでした。」
えへへと笑いながらハンカチで口を拭うみなみさんを見ながら、コーラを飲もうと再び口をつけた。その瞬間口元にコーラではない甘い香りが広がるのに気づいた。
間接キス
その言葉が頭をよぎった瞬間、僕は動揺してむせてしまった。恋愛免疫のない僕にとっては急にきた間接キスは衝撃的なことだった。みなみさんが心配して先ほどの僕と同じように背中をさすってくれたのだがまともに顔が見れない。
「みなみさん。もう大丈夫だから。それよりそろそろ行こうか。」
「雅晴さんもむせましたー。似た者同士ですねー。」
笑顔を見せながら馬鹿にしてくる星野だったが雅晴は動揺して返事を曖昧に返すことしかできなかった。こんな動揺しているところばれたらと雅晴は橋本にからかわれることを恐れ平常心でいることを心掛けた。
「ようやく帰ってきたな、ポンコツカップル。」
「やめろよ、ポンコツでもないし。カップルでもないです。」
そしてみなみさん、なぜ否定してくれないの。からかう橋本の横に齋藤さんと蘭世の姿があった。二人とも橋本に何かを吹き込まれたのか僕と目を合わそうとしてくれない。
「もういいから、齋藤さんの服を買いに行こう。」
「はいはい。生田がすねる前に早く行きましょうか。」
「まぁ、生田。どんまいだな。」
そういって桜井や橋本は雅晴を置いてどんどん目的地へと歩き始めていった。
「生田先輩いつまでも拗ねてちゃいけませんよ。早く行きましょ。」
僕は蘭世に慰められながら、腕を引っ張られ橋本たちの後を追った。自分でも思うのだがその光景は男として何とも情けない姿だったと思う。