01 集合時間 (男子side)
ゴールデンウィーク真っ只中、雅晴は姉である絵梨花のために朝食作りに苦戦していた。まさか前日になって橋本から蘭世達のお祝い兼ねて出かける事を聞かされた雅晴は大慌てでよそ行きの服を探していたため起きるのがつらく、朝食1つ作るにしても睡魔が襲ってくる。
「姉さん。朝ご飯できたから早く食べて。」
姉さんを起こしながら二人暮らしの苦悩が日に日に積もるばかりだ。父は四年前に亡くし、母は単身でドイツへ音楽家活動。いつも母の方はふらっと帰ってきてはまたすぐ旅へ出て行ってしまう。かわりに姉さんや家のことは僕が担当し、経済面では姉さんが担当なのだが圧倒的に不利だよね。
「雅晴〜。今日、お味噌汁濃いよ。」
「ごめん。寝不足でそこら辺の感覚鈍ってるから若干いつもより味違うかも。」
絵梨花のいちゃもんに耐えながらも朝食を済ませた雅晴は綺麗に整えられた洗面台に写る自分と向かい合いコンタクトをつけようとする。あまりの不器用さに目に激痛も走ることがしばしばありながらも初めてつけたときよりも早めに終わることができた。
「おー、似合ってるじゃん。なに、デート?」
「違うよ。橋本達と買い物だよ。」
ふーん。と疑いの目を僕に向けながら姉さんはピアノがおいてある書斎に入っていった。そこからは普段の姉からは想像もつかない美しいピアノの音色が聞こえてくる。大ざっぱな性格の姉とは真逆の性格をもつ繊細なメロディーに小さい頃からそばで聞いていた僕は心惹かれていた。
うとうとしながらピアノに気を取られ、ふと気付くとそろそろ橋本と桜井との待ち合わせ時間にギリギリの時間だということに気付く。慌てて部屋に戻り、身支度を整える。スマホを確認すると星野からのメッセージが来ていた。
『今日、楽しみですねー。気合い入れていきます!』
僕は早々に星野さんに返事を返していく。ゴールデンウィーク前、星野さんから連絡先を教えて欲しいと言われ、教えて以来毎日のように連絡を交わしている。たまに忙しいときは既読スルーをしてしまうがまた向こうから連絡が来て続くの繰り返し。蘭世といい女の子はLINEをしないと生きていけないのか、そんな疑問が浮かんでくる。
書きかけのレポートを見ながら、1つため息をつく。
「姉さん。行ってくるから、ご飯は冷蔵庫にあるやつ暖めて食べてね。」
奥から返事が聞こえたことを確認し、雅晴は玄関から急いでバイクをだして橋本達と待ち合わせた場所へと向かった。