06 興味(女子side)
時刻は6時半となりそろそろ閉店時間になろうとしたころ私たち二人は片づけを始めた。奈々未さんは携帯を見ながら、いつもと違う様子を見せていた。
「誰からか連絡待ってるんですか。」
「彼氏。」
奈々未さんに彼氏いたんだ。てか、できるもんなんだ。確かに大人の女性特有の色気というものがあるな。すかさず自分の体形を手でなぞっていく。絵にかいたような幼児体形だとすぐにわかる。
飛鳥は奈々未と自分の体型に溜め息が思わず出る。自分の幼さに気が重くなったのか本が異様に重く感じてしまう。窓の外をみるとガラス越しでも音が聞こえる大雨である。鞄を傘代わりに慌てて帰るサラリーマンもいれば、仲良く手をつないで帰っている親子が通っていく。
先ほどの客は果たして傘をさして帰ったのか、それともあのサリーマンのようにずぶ濡れになりながら帰ったのだろうか。そんなくだらないことを考えてみる。
「さっさと仕事せい。店長に言ってお給料減らしてもらうわよ。」
背中を小突かれてぼーっとしていた意識を取り戻す。途中だった本の整理しながら大学の参考書コーナーに辿り着く。一冊の本を手に取ろうとするが中々手に届かないところにあり、届いても指先程度でひっかけてもすぐに滑り落ちてしまう。あきらめて作業に戻ろうとすると後ろからスッと先ほどの本を本棚から抜き出していく腕が見えた。途端に体がビクッと反応した。
「そんな驚くことないでしょ。この本頼まれてたの。」
「彼氏さんですか。」
「違うわよ。彼氏なんてそもそもいないし、なんせ弟LOVEだもの。今日この本取りに来るって連絡来たんだけどね。」
物理の参考書をボールのように左右の手で行ったり来たりさせながらレジへと颯爽に戻っていく。レジの機械音が静かに響く中、ひたすら整理していく。最初の頃はきちんとはやっていたものの慣れというものは怖いものでだんだんと作業が手薄になっていってしまう。
それを知っては知らずか、奈々未さんは作業を終えた私にお疲れと一言声をかけてくれた。
「暇ね。閉店時間までもう少しだっていうのに。」
「知りませんよ。てか、その人本当に来るんですか。明日とかだったりして。」
「案外付き合いが長いのよ。だから、私との約束が守れない時どうなるかはその子はとうに知っているはずよ。」
笑ってはいるが内心とてつもない考えをしている奈々未さんに若干の引きを感じた。カウンターに置いてある取り置きの本をめくってみる。なんとなくだが見たことあるものばかりで気づけばじっくりと読み込んでいた。
「飛鳥、あなた心理学専攻なのにやけに物理に興味あるみたいね。」
感心したかのように声をあげる奈々未さんの声に顔をあげる。とても、生田先輩の影響だとは言えない。ただ、物理を知りたいというよりも彼が一体どんな考えをしているの知りたかっただけ。