花言葉〜恋していいですか?〜 - June
03 紅茶(男子side)
紅茶の香りが香る中、3人に紅茶を配り終え、ようやく落ち着こうと席に座ろうとすると西野教授がポンポンと席を叩きながら僕を隣の席に招いてきた。断る理由もないので隣の席に座る。メガネが多少曇る中紅茶を一口含み、味を確かめる。紅茶の風味が口に広がり、同時に体中に温かさが伝わってきた。

「生田君。クッキー食べへんの。このクッキー、おいしいんやで。」

にこやかにクッキーを差し出そうとするので、僕は受け取ろうとすると彼女はムッとした表情をして差し出した手を引っ込める。思わずその態度に疑問を抱く。ただ単にからかっているのならそれでいいなと思ったとき、口元に先ほどのクッキーが運ばれてくる。

「はい、あーん。」

思いもよらない事態に雅晴は困惑した。反射なのかわからないが無理やり口元に運ばれたクッキーを口に含める。その瞬間、パッシャッとカメラの音がしたので、横を見ると白石がスマホを構えているのが分かった。雅晴は慌てて、クッキーをかみ砕き白石のもとに行き顔を真っ赤にしてスマホを取り上げようとするも無残にも失敗に終わる。

「いいねー、この2ショット。なんか、カップルみたいだし。雅君、ちょーかわいいよ。」

4人のグループ画面に送られてきた写真には僕と西野教授が写っていて、僕の表情は何とも自分では見ていられないくらい照れた表情。また、クッキーを食べさせてもらっているのが恥ずかしさに拍車をかける。

面白がる白石さんに一括入れてもらおうと西野教授を見るが、彼女はその写真をじっと嬉しそうに眺めていた。その目には何か懐かしさに浸るようなもので、僕はそんな彼女の横顔に見惚れていた。

「なぁちゃーん。なにぼーっとしてるのー。」

「え。ああ、なんもあらへんよ。ちょっと考え事してただけ。」

西野教授は慌てて自分のスマホから視線を外し、残っていた紅茶を飲み干す。飲み干したのはいいが喉に引っかかったのか咽たので僕はゆっくりと背中をさする。

「西野教授。とりあえず、食器片付けますね。」

深川さんがそう言って食器を片付け始める。その様子はまるで母親のようで、雰囲気で落ち着く。さすり終わった後、西野教授の目にはうっすらと涙が見えた。それはむせた時に出た時の涙なのか、はたまた…。

「なぁちゃん。研究のことなんだけどさ。」

「まいやん。なぁちゃんって呼んじゃだめだよ。教授なんだからちゃんと西野教授って呼ばないと。」

やっぱり女神に仕える聖母みたいだなと僕は暢気に二人のやり取りを聞いていた。そもそもこの二人はなぜこの研究室に所属しているのだろうかふとそんな疑問が頭をよぎる。

「別になぁちゃんでもええよ。だけど、研究よりも今は量子力学の単位の心配したほうがええんやないの。」

苦笑いを浮かべながら単位を忠告をする西野教授。そういえば、白石さんレポート提出してる姿見たことないな。だってーと言いながら足をバタバタとさせて弁解をする白石さんを見ているとなんだか子供みたいで微笑ましく思う。

「まいまい見せてくれないしー。なぁちゃん、毎日忙しそうなんだもん。」

「だって、まいやんすぐわかんないって聞いてくるんだもん。少しは自分でやらないと。」

ケチーと机に突っ伏しながらあきらめた様子を見せる。五月に齋藤さんとの約束を思い出す。挨拶を交わす程度までの仲にはなったけど勉強に関してはあれから一度も耳に入ってこない。果たして、自分でちゃんとできているのか僕はいらぬ心配をするがそれよりも何か違った感情が僕の心にちらついていた。


■筆者メッセージ
こんばんは。
拍手メッセージありがとうございます。

今回は大量の拍手がきてびびっております。なんかしたのかな。正直怖いですw

返信メッセージ

カズさん
毎回、ありがとうございます。応援メッセージは励みになります。こえからもどうぞお願いします。
桜鳥 ( 2016/09/09(金) 00:25 )