花言葉〜恋していいですか?〜







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June
18 ひとさし指(男子side)
会心の一撃とはこういう事を言うのか。彼女はただ目に涙を溜めて、茫然と僕のことを見つめていた。それが耐えられなくて思わず彼女に背をむけてしまう、しかし冷たく言い放ってしまったのかとは思うが見栄を張った嘘は嫌いだ。根拠はないが彼女の心は嘘をついている。

「僕とみなみさんが付き合って、飛鳥さんは素直に喜びますか。少なくとも僕は僕の気持ちがわからないまま付き合うのは自分が嫌だし何しろ相手に失礼だと思うな。」

「好きっていう感情ですか。」

一度開いてしまった口はふさがらず、次から次へと言葉が出てくる。あくまでこれは僕が勝手に作った恋愛論だ。正解なんてない、ただ今まで目を反らして見てきた男女関係を紡ぎ合わせて絞り出しただけ。そんなことを考えていると突然、人差し指にぬくもりを感じる。

「バスが来るまでこのままにさせてください。」

先ほどの感じた冷たさが嘘かのような温かさ。顔を見ることができなかった、見てしまったら思考が崩れていってしまう。いつも小さい声が余計に小さく聞こえる。

いけないことだとはわかってる、彼女には彼氏という存在がいるんだ。そう必死に自分の心に言い続けていた。じゃあ、もしいなかったら。スーッと頭の中が軽くなっていくのがわかる。あぁ、何も考えられないんだねと自分自身に問いかけた。

「生田先輩はなにもわかってないんですね。」

「え。どういうこと。」

「みなみの気持ち、それと私の気持ち。」

雨が降っているはずなのに雨音が聞こえない。僕は彼女の声が震えていることに気付く。なんでそんな泣きそうなのかわからない、そう二人のことは何もわかっていないんだ。

「私、わからないんです。今まで好きな人や憧れの人はいました。付き合っていた人だっています。ただ…。」

「ただ?」

目を合わせた瞬間、クラクションの音が聞こえる。振り返ってみると、どうやら自分が乗るバスがやってきたみたいだ。消えていた雨音が再び耳に響いて、彼女の声が僕の耳に入らなくなっていた。そっと、握っていた手が離れていく。

「ごめん、バスだ。傘ありがとう。」

「あっ、はい。気をつけて。」

「そうだこれ飛鳥さんに。これね、僕の中で一番わかりやすいと思ったやつなんだ。いろんなところで探したんだけどなくてさ。」

「これって、さっきの。」

カバンから一冊の本を取り出す。彼女はその本をまじまじと見ながらゆっくりと受け取る。
バスが停車し扉が音を立てて開く、時間がないため伝えたいことが伝えられない。せめて、一言だけでも。

「読んでてわからなかったら聞いて。連絡先挟んでおいたから。」

急いでいたためこれしか言えなかった。ほんとはもっと違うことが言いたかったが出発を急いでいるのかクラクションを鳴らし僕を急かす。急いでバスに乗り込みほかの乗客に小声で謝りながら空いていた一番後ろの席へ座った。
窓の外を見ると飛鳥さんは待っていたかのように小さくではあるが手を振っていた。思わず振り返してしまう僕。バスが出発しはじめドンドンと彼女との距離が遠くなっていく。
人差し指のぬくもりを探すようにそっと指をなぞっていく。

「なにもわかってないか。」

なぜかぽっかりと穴が開いたようにただ目的につくまで僕は人差し指を握ったまま静かに眠りについた。


■筆者メッセージ
こんばんは。
たくさんの拍手メッセージありがとうございます。
最近、twitterでもよく見かけるのですが、妄ツイなるものが流行っているようですね。スクロールする度に出てるので暇なときに見ている程度ですが僕には書けないと思いましたね、書き方が違うのでそれもまた面白さなのかとも思いました。

返信メッセージ

名無しさん
この三人の嫉妬の連鎖を描くのは難しいんですよね、何しろ教授のほうが他と関係性をあまり持っていないので無理やり作るしか...(笑)
だけど、それもそれで近いのを考えているのでお楽しみに。
桜鳥 ( 2016/10/12(水) 00:42 )