22 履修
学部棟のあっちいったりこっちいったりと朝から科目ガイダンスで飛鳥達は目的地である教室を地図を頼りに駆けめぐっていた。
「飛鳥ちゃん。そっちじゃないよ、こっちこっち。」
「え、あーほんとだ。また、そっちか。」
ため息を一息ついた私はすぐさま来た道を引き返し、次のガイダンスの教室へと向かっていた。なんで、こんなにも忙しいのだ。まだ、講義も始まっていなのに忙しすぎる。
「もう、広すぎるよこの大学。ねえ、蘭世。次の講義何だっけ?」
「次は自然科学論?Tみたいだよ。ええと、3302教室。やっと着いたよ。」
目的地である教室にようやく着いたらしい。開始時間ぎりぎり、飛鳥たちは続々と押し寄せてくる学生の中教室に入った。履修者は50人程度、主に心理学部などだろうその学生の中には星野みなみの姿がみえる。この『自然科学論?T』は大学の理系コース以外には必修の様で理科が苦手な飛鳥にとっては出たくない講義のひとつである。。
教室の中は休み時間などで騒がしい様子でところどころでこの講義に対して文句を唱える生徒もいた。
「蘭世と飛鳥。良かった、講義一緒だね。」
「みなみちゃんもいたんだ。ここ空いてるから座ってよ。」
蘭世は隣の椅子に置いてあった自分の荷物を脇に置き星野を招き入れた。ありがとうといい履いているスカートに気を使い丁寧に座る星野を飛鳥はまじまじと見る。さすがは女子といわんばりの格好である。入学式以降毎日のように三人とはよく顔を合わせるが蘭世と星野に関しては毎回のように格好を変えてきて飛鳥は関心をしていた。
講義のチャイムが鳴り静まり返る教室。しかし、この講義の担当である教授が姿をみせない。すると、教室の廊下からカツカツとヒールの音が聞こえはじめ、やがてその音はこの教室に近づいてきた。
「すいません。あんまりこっちの棟に来ないもんやから、時間配分わからんくて。」
ふんわりとした関西弁に和やかな笑顔で教室に入ってきた担当の教授。先ほどまで静かだった教室が少しざわつき始めた。
「えーと、この講義は『自然科学論?T』ですけどあってますか?」
マイクを使いながら50人程度に一斉に話をかけるも数人しか応答しなかった。黒板に黙々と講義名と自分の名前を書き始める教授。
「『自然科学論?T』を担当させていただきます、西野七瀬です。主に教育学部の理科コースにいるんやけどね。必修のこの講義と後期の『自然科学論?U』の生物以外の理科系を教えます。生物は今いないけど松村さんという方が担当するのでよろしく。」
入学式で会った教授だ。生田先輩や橋本先輩のところにいた教授だったのかと飛鳥は先程まで関心がなかった講義に自然と興味がわいてきた。