19 慰め
自らの一方的な勘違いかもしれないことに気付く。もしかしたら自分はとんでもないことをしてしまったと。
蘭世や橋本先輩も勘違いだと言っている。確かに付き合って長い二人に言われれば説得力があるし、付き合いが浅いやつの言い分なんか説得力がないに決まっている。
自らの過ちを犯したという疑惑が確信へと変わった時、飛鳥の目には自然と涙がたまっていた。
「え、え?ちょっと待って。」
生田先輩が慌てている。どうしよう、ほんとにひどいことをしてしまった。私は涙を堪えることができなくなっていた。このままここにいたら情けない姿を見せてしまう。
「生田先輩、ごめんなさい。」
涙が頬につたってきた瞬間に私は勢いよく実験室を飛び出した。やっぱり、私には人間関係とかは難しすぎる。そう思いながら必死に行く当てもないまま廊下を早足で歩いた。
「あら、どうしたん?せっかくのお化粧が台無しやで。」
俯きながら歩いていると優しい訛りが聞こえてきた。顔をあげると今朝入学式で出会った西野教授だった。
しかし、せっかく声をかけてもらったが今の私は話せるほどの精神状態ではなかった。
「ふふ、泣いてたんや。可愛いな〜。今度、ななの研究室遊びにおいで美味しいお菓子あんで。」
そういって西野教授の名刺が渡された。そのまま、西野教授は先程私が通ってきた道をそのまま進んでいった。
今日は散々な目にあっているなと思いながらエントランスの机へとゆっくりと腰を下ろした。先ほどの涙をぬぐうように顔と手をこするとそこには今朝母親が塗ってくれたファンデーションなどの色が落ちていることに気付いた。せっかく化粧までしてもらったのにと思うとまた涙が出てきそうになった。しかし、また泣いてはいけないと私は上を見上げた。
そこには白い光が点々と規則正しく並べられており虚しく光っている。
「あの〜、あなた新入生?」
ふと声が聞こえた、甘い声。飛鳥は天井を見上げるのをやめ、声のする方向を見た。斜め右前の正面のテーブルに少女が一人座っていた。そのテーブルにはちょこんとパンがのっていた。
「どうしたの?目、真っ赤だよ。」
私はすぐさまその子から目をそらした。初めて会うのに情けない姿を見せてはいけないそう思ったからだ。