18 望まない再会
広い校舎を歩くと一番奥の部屋から明かりが漏れていた。コーヒーの匂いが壁越しに微かに伝わってくる。その匂いと同時に妙な緊張感が生まれてきた。
「まって、なんで私ここに来てるの。」
今更だがなぜここに来てしまったのだろう。何も接点もないはずなのにノコノコとここまでついてきてしまった。飛鳥は今更ながらに後悔をし始めたが時は戻ること無く無情に過ぎていくことにたいし残酷さを知った。
能條がノックをして扉に入っていった。蘭世に手をひかれながら扉付近まで行くも怖くて足を止める。
「じゃあ寺田が先にいって飛鳥ちゃんの事紹介するね。」
そう言い残し蘭世は扉の向こうへといってしまった。中の様子はどうなっているのか気になり扉からそっと覗く。そこには二人の男が蘭世を見ながら軽いやり取りをしていた。一人は朝受付で出会った橋本先輩、橋本先輩が叩いた人は後ろ姿でよく見えないのだがこの人が生田先輩だろう。
「そうでした。先輩方に言いたいことがあったんですよ。寺田にお友達ができたのですよ!」
いきなり中の様子を見ていた飛鳥の手がひかれた、飛鳥はまだ心の準備ができていないため抵抗をしたのだがやがてあきらめがつき素直に実験室に入ることにした。
噂になっている生田先輩と目が合う。私はその時にすでにその生田先輩と出会っていたことを思い出す。そう、あの時桜が降りしきる会場に向かう坂道で。
「生田先輩。飛鳥ちゃんと知り合いだったんですか?」
生田先輩も気づいたようで蘭世の質問にしどろもどろになって答えている。
また訳が分からなくなった飛鳥の頭には今朝の「変態」という二文字が離れずにいた。
何を言っていいかわからず私は蘭世に対し先ほど説明した人ということを言おうと口をひらく。
「こいつがさっき言ってた変態だよ蘭世。」
「「「えっ。」」」
生田先輩に一気に視線が集まる。あれ、私なにか間違ったこと言ったのかな。
頭の中でもう一度整理してみると生田先輩からの弁解の声が聞こえた。
「違うってば、ただ僕はハンカチを拾っただけだってば。それで、誰が落としたのか考えてたらいつの間にか変態扱いされたんだって。」
飛鳥の目には真剣なまなざしで弁解をする雅晴が映っていた。