15 返事
ようやく結果用紙を取り返したころには一通り教室内が静かになったころだった。
飛鳥は取り返すのに必死で能條の最後の話を聞きながら息を整えていた。
「では、今後ともよろしく。何かあれば言ってくれ、喜んで協力しよう。」
これで終わりか。一日中神経を使いすぎたせいか私はそのまま机に伸びた。もうこのまま帰って早く布団にもぐりたい。
「何やってるんだろ。返事来ないな。」
蘭世がスマホを見ながら、ため息を漏らしていた。気になったは私はちらっと蘭世のスマホを覗き見た。そこには生田雅晴と名前が書いてあり、トーク画面を見ると蘭世の一方的なメッセージで既読がついていないなんとも虚しいトークだった。
「忙しいんじゃないの?その生田先輩って人。」
「うーん。まず、寺田みたいに好き好んでスマホ使うような人じゃないから。」
そういうと蘭世はそそくさと廊下へと出ていってしまった。新入生は皆解散し教室には飛鳥一人だけ残された。先程の疲れのせいか眠りにつこうかと顔を伏せると、何やら廊下から盛り上がる声が耳に入り顔をあげあたりを見回す。
その声が気になりそっと廊下に出てみると複数の学生が一つの場所に集まっているので飛鳥は人が少なくなった瞬間にその場所へと小走りで向かった。
「また、違うやつだ。えっと、アサギマダラ?」
なに一つの汚れもないその姿に飛鳥はいつの間にかその姿に魅かれ先程の蝶と同じように見惚れてしまう。ふと、視線を感じ振り返ってみると一人の少女が標本と同じ汚れもない純粋な瞳と笑顔でじっと立っていた。
「あっ、ごめんなさい。えっと。」
「大丈夫ですよ。綺麗ですよね、アサギマダラ。好きなんですか蝶。」
「いや、たまたま綺麗だったら見惚れてて。」
急に話しかけれて人見知りである私は少し焦り対応に困惑した。すると、私を探していたのか蘭世が駆け寄ってくる。明らかに履き慣れていないヒールだからか走りつかれたようで少し息が乱れていた。
「ここにいたんだ、飛鳥ちゃん。教室戻ったらいないんだもん。ん?どちら様?」
蘭世は私と一緒にいた見知らぬ少女の存在に気づいたのか疲れが吹き飛んだ様子で逆に緊張感で固まっていた。