花言葉〜恋していいですか?〜







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April (女子side)
08 早朝
眠い。眠すぎる。
ぼーっとする頭を抑えながら飛鳥は洗面所に向かっていた。

「まだ、あと二時間もあるじゃん。」

顔を洗いながら愚痴る私。昨日の電話から緊張しすぎて、十分な睡眠がとれないでいた。
時刻は八時になっており、家の中では母親と父親が廊下を行ったり来たりとしていた。
入学式なのにそんなにあたふたする必要があるのか。私はタオルで顔を拭きながら洗面所を出た。

朝食を早めに済ませ、部屋に戻ると昨日受け取ったスーツが綺麗にハンガーに掛けてあり、飛鳥は諦めがついたかのようにスーツに着替えていった。
同じスーツのはずなのに昨日とはまた違う着心地になっている。なんだか、むず痒いというかきついというか何とも不思議な感覚になっていた。

「飛鳥。玄関で写真取るぞ。」

「まだ、着替えてるから。もうちょっと待って。」

下の階から響く父の声。毎回入学式の度に玄関にて写真を撮ることが行事になっている。私は先程の言葉に急かされながら両親が待つ玄関へと向かっていった。

「ほら、飛鳥。早くしないと間に合わなくなるから。」

初めて履くヒールに悪戦苦闘している私に向かって母は急かしてくる。私はいっそのこと普段履いているスニーカーで写真に写ってやろうかと思いながらヒールをやっとの思いではき、ぎこちない動きで玄関の前へと立った。その様子を見ていた父は感慨深そうに笑っていた。



「ねえ、後どれくらいで着くの?」

「この様子だとホントにギリギリだな。」

乃木大に向かっている最中、飛鳥達が乗っている車は通勤ラッシュ時の時間に来てしまったため渋滞に巻き込まれていた。そわそわする気持ちを抑えながら、飛鳥は髪を後ろに束ねていた。

「間に合わなかったら、どうしよう。」

「大丈夫。間に合うから。」

私の不安をよそに両親は根拠のない自信を持っている。窓の外を見てみると自分と同じような格好をした学生が続々と歩いている。この人達は果たして自分と同じ場所を目指しているのだろうか、飛鳥は食い入るように窓を眺めていた。

飛鳥が予想していたとおり、新入生の集合時間に間に合わなそうだったため飛鳥は母親とともに途中から歩いて乃木大を目指していた。


桜鳥 ( 2016/04/12(火) 10:13 )