04 連絡先
「あっ、飛鳥ちゃん。LINE交換しようよ。入学式に会うためにさ。」
突然の連絡先の交換に戸惑いを隠せない飛鳥はすぐさま奈々未にどうすればいいか目で訴えたが奈々未からスマホ持ってらっしゃいと顎でサインされ、急いでスマホをもってくることにした。蘭世の方は先に会計を済ませ、飛鳥がスマホをもってくるのを待っていた。
「お待たせ。持ってきたけどどうするの。」
「飛鳥ちゃん貸しなさい。暗証番号は?」
奈々未さんにスマホを取り上げられ、私は奈々未さんに買ったばかりのスマホの使い方とLINEの使い方を教えてもらい、無事蘭世との連絡先の交換にたどり着けた。
「じゃあ、また明後日にね。」
「ばいばーい。ありがとうね。」
その後、蘭世は本屋を後にし飛鳥は事務所に戻りぐったりとした様子で机にもたれていた。
時刻は17時。もう、こんな時間か。私はスマホのロック画面を解除し、先ほど連絡先を交換した蘭世のトーク画面を開いた。
『これからよろしくね。飛鳥ちゃん。』
めったに来ないLINEのメッセージに慣れない手つきで飛鳥はLINEの返信をした。
奈々未はすでに帰り支度を済ませそのままあがっていったが飛鳥は帰り支度をしながら近くのスーパーに母親から頼まれた夕飯の買い物にでも行こうかと考えていた。
「夕ご飯まだなんだからあんまり多く買うなよ。」
スーパーで夕飯の買い物をしている時、隅のパン屋からなにやらにぎやかな声が私の耳に届いていた。
「あっ、牛肉安いじゃん。買っていこ。」
そんな事を思いながら、私は他にも自分が食べたいものを買っていった。会計を済ませて、買った商品をカバンにぱんぱんに詰め帰ろうと外へ出たとき、駐輪場から先ほど聞いた声が聞こえてきた。
「ほんとにありがとうございます。先輩は命の恩人です。」
蘭世だ。お腹が減っていたからここで買い物でもしていたんだ。
私は、気づかれないようにそっと蘭世の様子を見ていた。
「あれは蘭世の彼氏なのかな?」
私からは後ろ姿しか見られないが間違いなくあれは男の人だ。しかし、やり取りを聞いているうちに男の方は素っ気ない態度ばかりであれでは蘭世が可愛そうではないかと考えていた。
ふと飛鳥は自分自身何をしているのだろうと我に返っていた。
これは覗きではないじゃないかと。私は急に恥ずかしくなってきて、すぐさま家に帰ることにした。