花言葉〜恋していいですか?〜







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番外編
04 May(星野ver.)
世の中に小悪魔系という言葉があるのはご存じだろうか。彼女はまさにその言葉が似合うような存在だった。

「みなみ、そろそろ俺ら付き合わない?」

男子学生が彼女の手をとり、真剣なまなざしで語り掛ける。一方の彼女は眠い目をこすりながら、男の手をするりと力なく抜き去っていく。

「ごめんなさい。みなみ、まだ誰とも付き合う気はないの。」

男はみんなこういっておけば大抵はあきらめがついていく。告白をされるのはもはや作業に等しかった。昔ならもっとキャーキャーとはしゃいでいたが慣れてしまえばもはやその価値が下がってしまう。

落ち込む学生を見ながら颯爽と去る。少し遊んだだけで勘違いするなんて、なんで男の思考回路はここまで単純なのだろうか。あきれるばかりである。

「みなみちゃん、こっちだよ。」

昼休みが終わって講義室に入ると友人の一人である蘭世が私を隣の席へと呼ぶ。彼女たちは私がなんで遅れたのかを知っている。

「また告白?」

「うん、まあね。だけど、ちゃんと断ったよ。」

感心したかのように蘭世は声を漏らす。スマホの画面を見るとメッセージの羅列ができており、それを器用に返していく。増えては消して増えては消して。

ある人物のメッセージの画面を開く。しかし、新しい通知もなくただ、星野の一方的なメッセージで返信はとても味気ないものになっていた。

「生田先輩から来てなーい。」

「そりゃ、生田先輩だもん。いつものことだよ。」

自分が今まで垂らしてきた甘い糸に唯一つかまろうとしない人物。引っ掛けようとしても逆に自分の方がどんどんとハマっていってしまう。

ふと、隣を見ると少女が一人寝息をたてながらスヤスヤと眠っている。私の恋路にとって最も大きな壁になるかもしれない彼女の存在。飛鳥は果たして彼のことをどう思っているのだろうか。

頬をつつくとくすぐったそうに体をもぞもぞと動かす彼女。やがてゆっくりと目を開けてはまわりの状況をゆっくりと見回している。

「ねー、飛鳥ちゃん。生田先輩から返信来ないんだけど。」

彼女は表情を変えないまま、カバンから一冊の本を取り出し、読み始める。

「生田先輩にも講義中だから返信は来ないと思うよー。」

「ねえ、飛鳥ちゃんてさ。生田先輩のこと気になる感じ?」

すると、目元の筋肉がピクリと動くのが分かる。動揺している。
口にはしていないが態度ではっきりとわかる。間違いなく気がある。

「みなみはみなみだし。わたしはわたし。」

静かにそう言い放って彼女は再び本の世界へと戻っていく。いづれにせよ、彼女はまだ彼の連絡先を知らないはず。私としては今が絶好の機会なのだろうと心の中がそういっている。悪い女なんだろうな私。そこまでして彼がほしいんだろう。

思わず笑みがこぼれてくる。久々のこの感覚、今この場で返信が来たらキャーと昔のようなリアクションが取れるのだろう。


講義が終わり未央奈を待っていると、聞き覚えのある声がこちらに向かって聞こえてくる。

「やはり、君とは根本的に意見が合わないみたいだね。生田君。君は僕よりも物理学においては優秀なはずなのに。」

「それは買い被りすぎです。それに宝条さんは宝条さんですし、僕は僕です。」

どこかで聞いたような言葉だった。何だろうこの感覚はモヤモヤとする。生まれて初めて出会う嫉妬という感覚に私はひどく嫌悪感を感じていた。

私が飛鳥に嫉妬?

目の前の袋に入っている食パンを一枚取り出し、口に含める。いつもなら美味しく感じルパンが普段よりもしょっぱく感じる。嫉妬の味?それとも悲しみの味?

黙々と食べていると隣のテーブルの席に先ほどまで生田先輩と話していた宝条という人物がゆっくりと座る。

「こんにちは。食パン一枚もらっていいかな。お腹減ってね。」

突然話しかけてくる宝条に戸惑いを隠せない星野だったが、食パンを一枚恐る恐る手渡す。

「ありがとう。危うく僕の思考が停止する寸前だったから助かったよ。君はえっと、命の恩人だ。」

「いえ、特に私は何もしていないんですけど。」

苦笑いで答える星野に対し、宝条は大げさに星野のことを過大評価し始める。最初は恥ずかしかったものの満更なものではなかった。変な人ではあるが、悪い人物ではないのだろう。

「そんな命の恩人の君に1つ聞こう。お礼になんでも好きなことを言ってごらん。」

笑顔の裏に隠された彼の本当のねらいがわからなかった。たかが食パン1枚程度で願い事をかなえてくれるなんて。

だけど、私の気持ちの中で嫉妬の気持ちが何かを後押ししてくる。それを抑え込もうとしてもなかなかいう事を聞かない。

「いいです。特に困ったことはないですから。」

宝条はエントランスに響くくらいの高笑いをしはじめる。その様子を唖然として見つめる星野。やがて、宝条は息を整えながら星野に告げる。

「僕は世の中に対して暇なんだ。なんでもいいから、暇つぶしになることを頂戴よ。」

私の中で何かが切れる音がした。思わず口角があがってしまう。

「だったらさ、飛鳥っていう子をあなた惚れさせてみてよ。」

私が小悪魔から悪魔となり変わる瞬間だった。


■筆者メッセージ
こんばんは。
珍しくの連日更新です!沢山の拍手メッセージありがとうございます。

今回は星野さんを書いてみました。イメージとあってるのかあってないのか...。
実際に握手会でレーンに並んだことはあるのですが写真とまんまでしたね。可愛い可愛いw
さて、また7月を書くのに少々お時間を取らせていただきます。年内には1度こちらにはあげるのでお楽しみに。7月は少し波をたてていきたいですね。
桜鳥 ( 2016/12/28(水) 00:17 )