花言葉〜恋していいですか?〜







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番外編
06 December(名無しver)
雪がシンシンと降る中、俺は彼女との待ち合わせに必死になって走っていた。すっかり街はクリスマス一色でカップルが光り輝く街灯の中を身を寄せ合って歩いていく。

数十分後にはこの人たちの仲間になることに期待を膨らませながら,彼女が待つ噴水の広場へと向かう。ようやく広場に着いた頃には、すっかりと体が暖まっていて目の前にはすっかりと機嫌を損ねていた彼女がいた。

「ごめん。だいぶ待たせちゃったみたい。」

「みたいじゃなくて、充分に待たせられたんやけど。」

「ごめん。だけどね、新しい計算方法を試してみたら面白い結果が出たんだよ。」

研究者である坂本真治は嬉しさのあまりついつい語りだしてしまう。クリスマスだというのに何のムードのかけらもないことに飽き飽きしていたのか、彼女である七瀬は聞く耳を持たなかった。

「今日はクリスマスなんやから、研究せんでいいんちゃう。」

「うーん。流石に来年から乃木大に行くからには今のうちからコツコツ進めておかないといけないから。」

朝から会えていないせいかやや不満げな表情を浮かべる彼女を俺は数少ない心理の知識でなだめていく。噴水が綺麗にライトアップされている中で必死に言い訳をする坂本の滑稽な姿がより際立つ。いっそこのまま噴水に入ってしまいたいくらいの恥ずかしさが込み上げてくる。

「全く何時間待たされたと思うてんの。」

「会うまでの時間を計算すると4時間と36分24秒です。」

「怖かったんやからね。連絡もないし、連絡来たと思ったら待っててとか。変な人達に声かけられるし。」

涙目になりながら本音を語りだす彼女に頭があがらなくなる。目の前の楽しみに心を奪われながら、大切なものを見失っていたことに気づく。申し訳なさに言葉が出なくなった。

突然ひんやりとした感覚が手に伝わる。七瀬の手だった。こんなにも冷たくなるまで、待っていたのか。どこかのカフェにでも待っていてくれればよかったのに。そんな健気な彼女が愛おしく思えてくる。

「寒かったんやから、ちゃんと温めてな。」

頬を赤らめながら話す西野に坂本はドキドキしてしまい、思わず目を逸らしてしまう。付き合って約一年よくここまで続いたことに奇跡さえ感じ始めた。

「七瀬、歩くの早いって。」

普段から歩くのゆっくりな彼女が今日に関しては相当な足運びに慌てて引き留めに入る。それでも坂本は必死についていこうと手を放そうとしなかった。

歩くことしばらく、着いた先では真っ白に輝くイルミネーションが目の前に広がっていた。うっとりと目を細めながら彼女はその美しい輝きを眺め、はしゃぐ。

「あんな、ずっとこれが見たかってん。二人一緒に。」

イルミネーションの輝きのあるせいか、より彼女の顔が神々しく見えてしまう。俺はそんな彼女の頬に衝動的になって口づけをする。

「どうしたんっ、急に。柄にもないで。」

冬なのに顔を真っ赤にしながら慌てふためいている彼女を見ながら、俺も思わず照れてしまう。研究しているときの真剣さと違って女性らしさが出ていてとても新鮮だった。

「なぁ、これから先ななとはぐれてしまったらどないする?」

子どものような純粋な目に思わず引き込まれそうになってしまう。いつも内気で寂しがりやな七瀬に俺は本当のことが言えなかった。

「俺と七瀬だったらまたどこかで出会えるよ。きっと。」

そういって俺は1つの指輪を渡す。せめて、そんな彼女に形が残るものでも残しておきたい。目の前には笑顔で泣きじゃくる七瀬が写っていて、それと同時に周りからは祝福の拍手がいつの間にか送られていた。もし、俺が消えてしまってもこれさえあれば。

「今、私世界で一番幸せやわ。」

思わず頬が緩んでしまう。それと同時に寂しさが込み上げてくる。きっと、俺がいなくなっても七瀬ならきっといい人が見つかるはず。

そんな事を考えていると高校生くらいの男が肩にぶつかる。

「す、すいません。」

「大丈夫だよ。そちらこそ痛くなかったかい。」

綺麗な瞳をしている。七瀬にはこんな純粋な青年と恋に落ちてほしいな。

「生田―、早くしろって。置いてくよ。」

青年はその声を聞くなり、慌てて走り去っていく。七瀬はまだ余韻に浸っていたのかこちらの小さな出来事には気づいていなかった。

「さあ、そろそろ行こうか。お腹減っちゃったよ。」

「えー、もうムードのかけらもあらへんな。」

急に現実に戻されて不服な顔を浮かべるが満足気に返答してくる。再び彼女手を握るとさっきよりも暖かなぬくもりで心が落ち着く。ほんとは疲れたなんて言えない。ここ最近の体力の低下や病状の悪化を考えてみるともうそろそろなのかもしれない。だから、彼女には悲しそうな顔をさせてはいけないんだ。

たとえ、余命が一か月といわれても。


■筆者メッセージ
こんばんは。
沢山の拍手メッセージありがとうございます。
そして、いつの間にか投票してくれたみたいでありがとうございます。40票とは初めてこの作品を書いたのにこんなにも投票していただいて感謝しかありません。

さて、予告なしに番外編を出したのですが大丈夫だったかな。しかも、クリスマス2日後に(笑)
因みに、一応3章も終わりだという事も忘れてました。次回も番外編になります。リクエストされた方の要望に応えてみました。

返信メッセージ
カズさん
お久しぶりです。ずっと応援していただいてありがたいです。そうですね、なんか暗くなっている展開なので少しでも明るくしていこうかなって考えていますw
だけど、かえってこっちの方が癖があるかな?

わらびもちさん
まだ、6月なのでどうなるかわかりませんよ。僕もはっきり言えばわからないんですよw
実は番外編は先にいただいていたので、次回わらびもちさんのリクエストに応えておきます。すいませんね。

名無しさん
メッセージありがとうございます。
つらい状況からは逃げたくなるのは人間だれしもあることだと僕は思っています。

そうですね、このまま終わりにはさせないですし予想を裏切れるような展開にはしていきたいですね。
桜鳥 ( 2016/12/27(火) 00:15 )