04 後輩
「ほんとにありがとうございます。先輩は命の恩人です。」
はいはい。といいながら会計を済ませ、スーパーをでて先ほど買った牛肉を詰めてバイクに乗ろうとしたら。
「では、また明後日にでも会いましょう!」
「え?どうゆうこと?」
突然の会いましょう宣言に僕がのっていたバイクは重心がずれ、僕はバランスを崩しながらゆっくりと倒れていった。
「あれ、LINEでお伝えしませんでした?寺田、春から乃木大の心理学部ですよ?」
「そんなこと言ってたか?」
バイクを起こしながら蘭世とのLINEでのやり取りを思い出すがいっこうに思い出すことができない。そもそも、蘭世とのやり取りはほとんど勉強中などにさらっと返していたものだったからその時は適当に返事をしていたのかもしれない。
こうなったら、あの時は大学が忙しかったからと適当に理由をつけて話せばいいか。
「先輩の事だから、勉強に夢中になって適当に返事してたとかいうんですか。」
しまった、ばれていたようだ。本人からの痛い視線は僕の胸に刺さった。
何でこうも、僕の考えはこの子にだけはばれるんだろう。
「ほんとに先輩は勉強好きですね。それだから、高校の時に変なあだ名つけられんですよ。」
僕のあだ名、某ドラマからとってきた『変人ガリレオ』。
大学でも言われる機会が少ないためあまり気にしていなかったがいざ言われると相変わらずおかしいと思ってしまう。
「まあ、そこまで気にしてないから。あと、言ったかもしれないけど大学合格おめでとう。」
突然のお祝いの言葉に急にあたふたし始めた蘭世。高校からよく蘭世は男子からの人気がありよく告白をされていて、雅晴自身も告白の事をよく相談されてこの様子を橋本と大爆笑していたことを思い出した。
「大学ではそんな態度見せないでよ?また、橋本と大爆笑しちゃうから。」
「あ、ありがとうございます。なるべく頑張ります。」
「じゃあ、また明後日。」
「はい、入学式。楽しみにしています。」
立て直したバイクにエンジンをいれ、去っていく僕に対しペコペコと最後までお辞儀していく後輩。面倒な子だけどいい後輩をもつことができたのかな。
そう思いながら家に帰ってみると姉である絵梨花の靴が無造作に玄関に置いてあり奥からは酢の匂いが微かに漂ってきた。
「ありゃりゃ、また姉さんやらかしたかな。」