01 お気に入り
「あっ、生田。西野教授が呼んでたぞ。」
ん?と僕は突然廊下で呼び止めにきた友人の橋本恭大を振り返った。
自分自身教授に呼ばれるくらいの騒ぎをやった覚えがないはずなんだけど。
「俺、なんかやったけ?」
「たぶん、新入生のコース案内の依頼だよ。」
二人で廊下をくだらない話をしながらも歩いて研究室に向かっていく。
ふと外を見ると大学構内では,外では間もなく入学してくる新入生にむけて各学生が準備を始めている。
「思ったんだけど,橋本の方が優秀なんだからお前が案内すればいいんじゃね。」
「まぁ、あれだ。教授のいつもの気まぐれだよ。あと、教授お前がお気にいりだから。」
橋本は苦笑いしながら答える。相変わらず、うちの教授は気分屋だし目付けられてるし。
飽きれながら研究室の前につきノックをする。
コンッ コンッ
扉越しから聞こえる返事の音。扉を開けていくとそこにあったのは,あみだくじをやったであろう形跡が残る抽選結果であり,その奥で一人の女性がパソコンの画面と向かい合っていた。
「西野教授〜。生田連れてきたっスよ。」
「あ。橋本君ありがと。」
画面越しからひょっこりと顔を出し御礼する西野七瀬教授。耳に残る関西弁がさっきまで僕の心にあった不満感を晴らしていく。
「じゃあ、俺は帰るわ。」
「え?裏切りかお前。俺を生贄にしてかえるのかよ。」
突然の置き去りに驚く僕に橋本が笑いながら肩に手を置く。
「ちげーよ。あと、おれも案内係だし。用事だよ,用事。課題実験のレポート取りに行くんだってば。」
え?と疑問を浮かべながらもう一回抽選結果を見ると,橋本と生田の二つの文字が。
「俺、先に説明受けたし。まあ、後あれだ。うん。じゃ、また。」
あー、そういえば橋本は女性がいるこの空間が苦手か。全てを察した僕。
しかし、大学に来てまでも腐れ縁が続きここまでも一緒になるとは。そう思いながら橋本を見送り振り返って席に座ろうとするとすでに教授が先に席に座っておりコーヒーをすすっていた。
「橋本君。相変わらずやね。」
資料を眺めながら先ほどまでいた橋本をからかっていた。そういえば、橋本が女性恐怖症ってこと知ってるんだったこの人は。
「で、お話って何ですか。」
僕は資料に夢中になっている教授の前に座り要件をきいた。
「見ての通り、コース案内は二人に決定しましたー。イエーイ。」
西野教授は無邪気に笑いながらクッラカーを引くそぶりを見せた。その後、西野教授がさっきから眺めていた資料を僕に渡してきた。
「コース案内って具体的には何するんですか。」
「それなんやけど、理科コースは通常の案内に加えて実験室も案内することになるんよ。だから、こん時に実験室の使い方とかを説明してほしいなって。」
「で、選ぶのが面倒くさいからあみだくじにしたわけですね。」
ピンポーンと笑いながら丸を作ってくる教授をよそに、なんで担任がこの人なんだろうと後悔する自分がいた。