20 報告
「うーん、考えておきます。他にも誘われてるんで。」
「そうなんや、なら資料渡しておくわ。一応な、教育系もやってるから考えてみて。」
「西野教授、いつの間に教育系やってるんですか。」
この人いったい何者なんだよ。若くして博士課程とるし、教育系にも携わってるのか。あまりにも衝撃的すぎて僕は飲んでいたコーヒーを飲むのをやめた。
確か西野教授の研究室に所属している先輩何人かいたな。僕の記憶の中に顔は浮かぶのだが名前が全然出てこない。
「研究の内容が内容やったから仕方ないんよ。」
西野教授は渋い顔をしながら奥にあったファイルからゼミの資料を取り出し、橋本に渡した。西野教授自身も教育系で教えている身だから嫌々でもやらなければいけないのだろう。
雅晴自身はすでに西野教授研究室に所属となるためもう選択肢はなくなっており、若干の後悔があった。
すっかり飲みかけのコーヒーが冷めた頃に雅晴と橋本は帰ろうと準備をしながら、西野教授をちらっと見たが鼻歌を歌いながら雅晴の先程のレポートを見ている。
「橋本はこの後どうするの?」
「松村准教授に会いに行かないといけないから待っててくれるか?」
「分かった。時間かかりそうだからこっちも作業してるね。」
どうやら橋本に関してはまだ時間がかかりそうだったので、僕は西野教授にいつものお願いをすることにした。西野教授は今の僕らの会話を聞いていたようで僕に旧校舎の鍵をジャラジャラと音を立てながら無言で渡してきた。
橋本と別れてから雅晴は旧校舎に向かっていった。その途中、ある少女が雅晴の目に入った。確か、堀さんの友達のみなみさんだっけ。雅晴はおどおどしているみなみをほっとけなかったのか声をかけることにした。
「あの、みなみさんだっけ?」
「えっとー、橋本先輩のー。生田先輩でしたっけ?」
「覚えてたんだ、すごいね。名前覚えてくれてるの今まで蘭世くらいだったからうれしいな。」
「いえ、先輩なんでちゃんと名前は覚えますよ。もしかして、みなみのことバカにしてます?」
すねたような態度をとってくる星野。近くで聞けば聞くほどすごく可愛い声してるな。雅晴が感心してる中、星野はそわそわした様子でこちらを見ていた。
「みなみさん。なにかあったの?」
僕が尋ねてみるとみなみさんからは急に僕には聞き取れないような声でぼそぼそとつぶやき始めていた。本人の顔を見ていると顔を真っ赤にした様子で僕に伝えようとしている。
「あの、さっき....で、それで…だったんです。」
もはや、新手のリスニング問題としか言いようがないのでなるべく表情から読み取るようにしていった。聞き取れなかった様に見えたのかみなみさんは少し大きめの声で再度僕に話をしてきてくれた。
「さっき告白されたんですよで、私断ったんですね。だけど、その彼あきらめないって言ってくれて。私どーしよって考えてたんです。」