18 妹
能條の作り話もあってか、話が行ったり来たりしながらもみんなは僕のために話し合ってくれた。
「しかし、これに関しては俺も何とも言えないなー。とりあえず、泣かせてしまったことに関しては謝んなきゃじゃないかな。」
ここの中で一番たけている橋本でも駄目だったか。やはり、謝ってみて何があったのか実際に聞いてみるべきだと雅晴は考えていた。目の前では、こちらの話題が済んだのか桜井が能條のハンバーガーを取り合いをしているのが目についた。
相変わらず、この二人はほっとくとケンカするんだから。仲介に入った橋本をみて僕はバカらしくて笑えてきた。
「やべ、こんな時間かよ。玲香に電話しなきゃ。」
「桜井氏もできがいい妹をもつと大変だな。」
慌てて電話をかけ始めた桜井。玲香とは桜井の妹の名前で兄の紫音とはすべてが逆で超が付くほどのまじめで高校では生徒会長をやっていると聞いた。
「生田の方は絵梨花さんに連絡しなくてもいいの?」
「まあ、遅くなっても心配する人じゃないから。」
そういいつつも僕はカバンからスマホを取り出し、姉さんから連絡が来ていないか確認した。案の定連絡はきていなかったが、代わりに西野教授からの論文がカバンから見つかった。
あの人の渡してくる論文はえげつないから早く手をつけないとな。ぱらぱらっとめくり内容を見てみても見たことがある数式がいくつかあるだけで残りは英字ばかりであった。
橋本も雅晴の論文を見て思い出したのか、少し渋い顔をしていた。桜井も電話を終え帰り支度をしていたため、雅晴たちも続いて支度をはじめた。
三人と別れ雅晴はバイクで家に向かっていたとき、ふと飛鳥の顔が頭に浮かんだ。
あの子が笑顔になったら、可愛いのだろうか。そう一瞬だけ考えた。しかし、なぜ自分はこんなことを考えたのだろうと疑問を浮かべ、それを振り払うかのようにバイクのスピードを上げた。
家につくと部屋で生き倒れていた絵梨花を見つけ、雅晴は急いでご飯を食べさせた。そして、自分の部屋に戻り西野教授から渡された物理の論文を時間を忘れたかのように雅晴は夢中になって解いていった。
「やっぱり、こっちの方がしょうに合ってるな。」