13 後輩
ノックとともに能條がはいってきた。実験室に変な緊張感が生まれた。
そして能條の後ろから入ってきた2人の後輩、二人とも僕らの高校の時の後輩らしい。
ドアから顔を出し恐る恐る実験室に入ってきた蘭世。いつもの通り蘭世なのだが、今日はいつもと容姿が違く、トレードマークであるツインテールではなくスーツに合わせ髪をおろしてきていた。
「蘭世?」
「蘭世だよ、バカ。」
変なとぼけた方をしてせいか橋本に殴られた。その様子を見て、蘭世は笑いながらそのやり取りを見ていた。
そんななか、ドアからこちらの様子をうかがっている人がいた。
「そうでした。先輩方に言いたいことがあったんですよ。寺田にお友達ができたのですよ!」
そういいながら、蘭世はドアのそばにいた子の手を無理やり引っ張ってきたのだがその腕があまりにも細くほんとに人間の腕かと思ってしまった。
引っ張られながら入ってきた子、観念したその子は蘭世に対し無駄な抵抗はもはややめていた。
僕はふいに見惚れてしまった。
それはあの坂道で出会ったスーツを着た乙女。ついさっきの出来事が雅晴の中で駆け巡った。乙女の方もこちらの存在に気づいたのか驚きの表情をしていた。
「生田先輩。飛鳥ちゃんと知り合いだったんですか?」
この状況を見て蘭世は察したのか僕に質問をしてきた。
「いや、知り合いではないんだけど。」
確かに名前も知らない会話もしてないし、だけど面識はあるのだがと心の中で考えがループしているとき。
「こいつがさっき言ってた変態だよ蘭世。」
「「「えっ。」」」
同級生と後輩が同時に突然、彼女の指さした方向にいた僕に振り返って疑いの目をむけてくる。むけられる疑惑の目。能條、橋本そんな哀れな目で見るなよ。蘭世は頼むから目をそらさないで。
「違うってば、ただ僕はハンカチを拾っただけだってば。それで、誰が落としたのか考えてたらいつの間にか変態扱いされたんだって。」
雅晴は真剣に弁解するものの飛鳥の視線は依然として変わらないものだった。