11 スタンプラリー
「おい、生田。なにびびってるのか知らないけどさ。早くつけないともう始まるぞ。」
「そう、だけどさ。反射的に目をつむっちゃうんだよ。」
そういいながら雅晴は3人に見守れながらコンタクトをつけていた。しかし、昨日橋本といった際にも30分もかかったものだからそんなこんなにすぐになれるというものではない。
焦る気持ちを抑えながら雅晴はコンタクトと格闘をしていた。
「よし、はいった。みんな申し訳ない。」
「では、行くぞ。私もちゃんとした準備できていないのだから。」
「てかさ、なんでこんな狭いとこなんだよ!」
そういいながら、四人がはいるには狭い個室のトイレで桜井大声をあげた。
誰にも見られたくないのでここを選んだのだがまさかここまでとは。苦笑いしながら、僕は何もかけていない素の自分の顔を確認し気合いを入れた。
扉を開け各自コース案内への会場へと移動した。
「ようこそ、乃木大理科コースへ!」
始まった本番。僕と橋本は昨日準備した案内の資料やスタンプラリーの説明着々とこなしていった。
やはり、橋本は女子受けがいいのかあちこちからひそひそと声が聞こえていた。そんなことを思っていると雅晴は先程の桜の下で出会った乙女が脳裏に浮かんだ。
「おい、生田。説明。お前の番だぞ。」
「あっ、ではですね。皆さんに探してもらうものは…。」
橋本に現実に引き戻され僕は改めてスタンプラリーの内容を進めていった。
一通り説明が終わり、スタンプラリーが始まろうとしていた。
ざわつく実験室の中一人の少女が目に入った。彼女は目を大きく開け真顔で校内の案内図を見ていた。橋本も彼女の存在に気付いたのか僕に耳打ちしてきた。
「なに、好みの子でも見つかったのか。」
「いや、そんなんじゃ。ただ、すごい顔で見てるなって。」
「ああ、あの子。堀ちゃんね。」
「もう、名前覚えてんのかよ。」
「受付で顔と名前を一致させてたんですよー。」
今日一日はこの失態をいじられるのだろうと自分で振っておいて、雅晴自身後悔をしていた。そして、始まったスタンプラリー。新入生はそれぞれ入学式で新しく友人となった学生とグループを組み実験室を後にしていった。