花言葉〜恋していいですか?〜







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April (男子side)
10 入学式
「間に合ったか生田。てか、コンタクトは。」

「急いできたから。はぁ。つけてないよ。はぁ。だけど、一応持ってきたよ。」

そういいながら僕はボンボンと自分のカバンを叩いた。
呼吸を整え周りを見渡したらそこには普段では絶対にありえないスーツ姿の桜井も見えた。
やはり式なのだからみんな普段とは違う格好でかえって雅晴は違和感を感じるものだった。

「そうそう、蘭ちゃんにあったよ。」

「会ったの?よくわかったなこんな大所帯で。」

「そんな必死こいて後輩探すわけないだろ。受付だよ受付。」

「ああ、なるほど。そういうことか。」

「そういうことかって、お前も受付だったんだからなー。」

そういいながら、橋本がお腹を軽く殴ってきた。だんだん、申し訳なく思ってきて、遅刻といい変態扱いといい今日の僕はとことん不幸に見舞われているな。

そう落ち込んでいた雅晴の隣から聞き覚えのある声がした。

「まあ、たまたま私が帰ってきたのが橋本氏の助けになったのだがね。」

そう言いながら友人の一人である能條幸城が、雅晴の肩に頭を乗せてきた。突然の登場に驚く雅晴だったが、橋本はもう顔を合わせているせいかあきれながら首を横に振っていた。
気だるい学長のあいさつの中まさか友人にこんなあいさつをされるとは、しかもつい先日に屋久島からはがきが送られてきたばかりだというのに。

「能條、お前いつ帰ってきたんだよ。」

「今朝だ。行方が知らないとのことで愛未から連絡が来てな。入学式で心理学部のコース案内の依頼を引き受けたから至急帰ってくるようにと。」

「で、たまたま入り口に突っ立てた幸城を連れてきて受付をさせたってわけ。感謝しとけよ。」

改めてこの二人には貸ができたなと思い、前を見ると既に学長の話も終わり大学教員の紹介に入っていた。今年度はどの先生が一年生の理科コースの担任につくのだろうと見ていると西野教授の名が呼ばれ堂々とお辞儀する姿が見えた。
彼女自身、生田達の担任につく際ものすごい人見知りをしてきて逆に学生側が気を使う形になったことは今でも鮮明に雅晴は覚えていた。

「さーて、式も終わったことだし。こっから本番だな生田。」

「ああ、そうだな。」

結局、一年生理科コースの担任は松村沙友里准教授という生物学を担当している方が呼ばれそれから続々と担当教員が呼ばれ無事入学式が終了した。
ぞろぞろと退場していく学生の流れを見ていく雅晴は先程の少女を探していたがその姿は見られずモヤモヤが取れないままでいた。

「やっと終わったぞ。去年より長くなかったか、学長の話。」

「去年、まるまる入学式寝てたやつができる発言か。」

「は。きちんと聞いてたわ。てか、生田いつの間に来てたんだ。」

そういいながら桜井は僕がいたことに対して驚いていた。

「始まる直前ギリギリだよ。危うく、遅刻しそうだったけど。」

「すでに生田氏は遅刻してるのだがな。」

そうでした。と改めて能條にぶり返され落ち込む雅晴を三人が笑った。自然と再会を果たした友人三人の久々の談話に先ほどまでのハンカチの件も薄れていった。


桜鳥 ( 2016/03/30(水) 06:40 )