第31話
しばらくエレベーターの中では無言が続いていた。
15階なんてエレベーターならすぐ着くはずなのに、やけに長く感じられた。
しかし間もなくすると、ポーンという音と同時にドアが開いた。
「うわ・・・すごっ・・・」
ゆりあがポツリとそう呟いた。
エレベーターを降りるとすぐそこに目当てのレストランがあった。
天井には巨大なシャンデリアが吊ってあり、店の中は如何にも上品そうな人たちで賑わっていた。
正直、俺は高級な店なんてすごく静かなところだと勝手に思っていた。
だが、流石にいつまでもここで唖然としているわけにはいかないので、
とりあえずレストランに向かった。
入口付近でゆりあの持っていた魔法のチケットを提示すると、
一瞬、疑いの目を向けられたが、特に何を言われるでもなく中に入れてもらえた。
ウェイターに案内された席は店の一番端っこで、すぐ隣は窓だった。
「こちらの席でよろしいでしょうか?」
「あ、はい、よろしいです」
なんだかぎこちない返事になってしまったが、ウェイタ−は表情変えずに去っていった。
「やっばいね、ここ、下を見下ろせちゃうよ」
ゆりあがワクワクを隠せない顔でそういった。
「綺麗だな、この町の夜景をこんな高さから見たのは初めてだ」
「え?なになに?ゆりあが綺麗って?そりゃ当たり前でしょー」
「は?べ、別にそんなこと思ってないし! ・・・今日は綺麗だと思うけど」
「なんてなんて?最後聞き取れなかった」
「聞き取れてなくていい!ほら、なに食べるかさっさと決めろ」
「相変わらず翔ちゃんは恥ずかしがり屋だねぇ〜」
俺は自分で言った事に言った後で後悔していた。今度からはこんな慣れないこと言わないでおこう。
さっそくメニューを開き、何にしようかと見ていたが、正直聞いたことのない料理ばかりで
どんな料理か全く想像できない。しかも値段が高い高い。
俺は普通のレストランだと思っていたので持ち合わせはあまりない。
ふと、ゆりあのほうに目線をやると既にメニューを閉じ夜景を眺めていた。
思わず、見惚れてしまった。なぜか分からないが見惚れてしまったのだ。
「ん?どうかしたの?翔ちゃん」
「あ、いやなんでもない。ゆりあは何にするか決まったのか?」
慌てて視線を逸らし、下を向いてしまった。
「あー何がなんだか分からなかったから翔ちゃんと同じのにするよ」
「え、俺もよく分からんから、ゆりあと同じものにしようと思ったのに・・・」
まさか考えがかぶってしまうとは・・・
「えー翔ちゃんも同じ事考えてたんだ。どーする??」
「そうだな・・・あれだオススメ聞いてそれにしよう」
「いいねっ!あ、でも魚だったパスね」
「あれ?魚苦手だっけ?」
「あんまし好きじゃないよ、食べれるけどね」
「へー意外。まぁとりあえず呼ぶか」
そして俺はスイッチを押しウェイターを呼んだ。