第25話
例のジェットコースターを除く全てのアトラクションを乗り終えた時にはすでに日が暮れていた。
そして今はあのジェットコースターに乗るために行列に並んでいる。
すでに並び始めて1時間が経過しており、中には諦めて列から抜けていった人もいた。
1時間も待ってるのにも関わらずどこが先頭なのか見分けがつかない。
「ねー翔ちゃん。あとどんぐらいなの?」
「まっだまだ。飽きたなら帰るか?」
「えーここまで並んで帰るはないよー。乗るまでいる」
営業時間内に乗れるかどうかが心配になったが、とりあえず乗る方向で並び続けることになった。
その後、さらに2時間並び続け、やっと順番が回ってきた。
しかも運よく一番前のシートに座ることができた。ゆりあが横で目をキラキラ光らせている。
そして動き始めた。
最初は何メートルあるのか検討がつかないほど長い登り坂をゆっくりと上がっていく。
「怖くなっておしっこ漏らさないでね?」
「お、お前こそな」
口では強がってみたが正直、怖くて仕方がない。普通のジェットコースターなら大丈夫だが、ここまで高いとかなりの恐怖を味わうことができる。
ついに一番上に達した。さらに速度が落ちゆっくりと降下していく。
一瞬、止まったかと思った瞬間・・・
「うぎゃああああああああああああああああああああああああっ!」
降下が始まった。思いがけず大声を出してしまったが、漏らさなかった。
ものすごい高さからスタートしたので速度は凄まじいものだった。カーブに差し掛かるたびに体が投げ飛ばされそうになり、俺は必死でシートベルトを掴んでいた。
そして、このジェットーコースターで最大のカーブからの連続2回転を迎えた。
ほぼ90度に等しいカーブを曲がり回転を迎えた。
上下が逆になり、横でゆりあが叫んでいる。俺自身が怖くて自分で何を言っているのかも分からなかった。
一回目の回転が終わり2回目の回転に入った。
そして、一番上に到達したところでなぜか止まってしまった。
「ね、ねぇ翔ちゃん?これって仕様だよね、毎回こうやって止まってるんだよね?」
「さ、さあな。た、多分大丈夫だと思うぞ。・・・たぶん」
完全に宙ぶらりんなので固定器具が外れたりしたら落下してしまう。もし外れなくともこの体制で何分間も待たされるのは地獄だ。
“ただいま、復旧作業中です。すぐ終わりますので、あまり動かずにお待ちください”
アナウンスが聞こえてきた。どうやらホントに故障だったらしい。
なんとか動かせる首を動かし確認できる範囲で確認してみたところ10人ほどの人が集まっているところがあった。俺はあまり視力がいい方ではないのでハッキリとは見えないがどうやら電気室的なところでトラブルがあったらしい。
それってヤバいんじゃないのかと思ってしまうが、そんな事を考えてしまったら終わりだ。
とりあえず、できるかぎり動かずに静かに待つことにした。