第9話
しばらく沈黙していた山本先生が急に立った。
お互いのしてやったり顔をバカにしあっていた俺たちはしゃべるのをやめ山本先生の方をみた。
「はー・・・やっと諦めました?初日から先生もやらかしま・・・ぐはっ!」
俺が途中で言葉を詰まらせた原因は山本先生がノーモーションで俺の腹に蹴りを叩き込んできたからだ。しかもかなりの威力。これ痛すぎて涙がにじむ。
「あぁそうさ。確かに俺はコイツのことを叩いた。それは認めよう」
「な、ならなんで俺のこと蹴った・・・痛いんですけど」
俺はうずくまったままそういった。
すると山本先生は真顔でこう言い放った。
「バレなければなんでもいいんだよ。ここでお前らの口を塞いでしまえば何の問題もない」
何をするつもりだと思った矢先、山本先生はゆりあの制服に手をかけ一気に引きちぎった。
ゆりあの大きくて柔らかそうな2つの膨らみが黒のブラによって隠されている。
俺は反射的にそこまで理解してから思い直した。今はそれどころではないと。
山本先生の手がゆりあの胸を隠している手を退けようと手を伸ばすがゆりあの金的蹴り上げによって一瞬、動きが止まった隙に俺の方に逃げ込んできた。
もちろん俺はもう痛くも痒くもないので立ち上がり、ゆりあを魔の手から守ろうとする。
するとゆりあが耳元で囁いてきた。
「ねー逃げちゃう?」
「い、いいけどお前その格好で大丈夫か?」
「翔ちゃんの体操服着るからいいもん」
そこまで言ったところで山本先生が突っ込んできた。ここまで来ると単に性欲に飢えた獣でしかない。ていうか動きがのろい。俺とゆりあが避けた真後ろにあった壁に顔面から突撃した山本先生は1人で自滅し気絶していた。
俺とゆりあは近くにあった縄で山本先生を縛り上げ机の足に固定してから部屋を後にした。
「はー・・・なんでバカは初日からこんなことをやらかすのかね・・・」
ゆりあが呆れたように言ってくる。
「わ、悪かったな。でも手は出してないからいいだろ」
「ふふ、絶対手が出ると期待して覗いてたのに翔ちゃんが呼ぶから・・・」
「出さねぇよ。てかお前部活はどうしたんだよ」
「翔ちゃんに言われた通りに適当に言い訳して抜けていた」
・・・やっぱバカだった。俺は一応、ゆりあじゃなくて俺が用事で抜けるからっていうのを伝えてと言ったはずなのにゆりあはお前も来いみたいな解釈をしたらしい。バカだわ。
それにしても入学初日からゆりあとばっかりいる気がする。
入学してから最初に喋ったのもゆりあだし、最初に怒られたのもゆりあとだったし、山本先生改め獣をやっつけた時もそうだった。これは運命の赤い糸で結ばれてるんじゃないですか!? ・・・そんなわけないか。
そして靴を履き替えグラウンドに出たときに思い出す。
・・・俺、上着てないじゃん。
「ゆ、ゆりあ!俺の体操服返して!」
「え?私これ脱いだら丸見えになっちゃう・・・あ、みたいって?」
「みた・・・見たくねぇよ!それじゃ俺のカバンの中から体操服とってきてくれよ!」
「えーめんどくさーい。そのままでいいじゃん」
「よくねぇよ!」
「ふふ、頑張って〜」
そう言うとゆりあは部室の方へと走っていた。
仕方なく上半身裸の不審者感丸出しのまま俺は部室へと全力疾走した。