第1章〜出会い〜
第5話
無駄に長い廊下を全速力で駆け抜け渡り廊下を渡り勢いよく体育館のドアを開けた瞬間、体育館内に集まっていた生徒全員の視線が俺とゆりあに向いた。
中にはクスクスと笑い声を漏らしている生徒もいればニヤニヤしている生徒もいる。
恐らくその原因は俺がゆりあの手を握っていることだろう。
ふと、ゆりあの方に視線を向けるとゆりあは下を向いていた。耳を真っ赤にして。
恐らく顔も真っ赤なのだろう。とりあえず俺はぶっ飛ばされる前にゆりあの手から手を離し何事もなかったかのように体育館内に入った。ゆりあは俺の後をゆっくりとついてきていた。

俺たちが席についた頃にはすでに入学式も終盤に突入していたが気にしない。
結局、俺がしたことは君が代を歌っただけだった。
椅子に着席していた時間は実に30秒程度。これは世界最高記録なんじゃないのだろうか。
学年主任の先生が解散の合図をすると全生徒がクラス単位で体育館から退場していった。5組の俺たちは最後なので全クラスがすべて退場してから退場になるのだが俺とゆりあは体育指導の教師兼生活指導の先生でもある戸賀崎先生に制服を引っ張られズルズルと生徒指導室まで運ばれた。

「お前らは一体、初日から何をイチャついとるんだ!」
これが生徒指導室に入ってからの戸賀崎先生の第一声だった。
「えっとぉ・・・そのイチャついてたわけではなくてですね・・・その・・・はい・・・」
「そ、そうなんです。イチャついてたわけじゃないんですよ」
俺とゆりあが揃って言い訳を試みるが戸賀崎先生は聞く耳を持たない。
「そう隠すな。先生は決して青春を邪魔するようなことはしない。それは約束しよう。だからと言ってだな・・・初日から教室で2人っきりで何しようとしてたんだお前ら?」
もうすでに戸賀崎先生の顔はニヤけつつある。どこまでこういう話好きなんだこの人。
「だ、だから!決して僕はこんなバカとイチャついてたわけではないんです!」

「そ、そうです!こんなスポーツぐらいしか使い道ないバカとどっちがバカか比べてただけなんです!」

思わず本当のことを言ってしまったが戸賀崎先生は気にしてないご様子。
「そうかそうか。そこまでして隠したいんだな。青春だな!もういいぞ帰って。2人の時間を過ごしてきなさい」

「「だからそういうんじゃないですよ!」」
思わず声を上げるとゆりあと同じことを言っていた。
「声までそろうとはホントに仲良しなんだなお前ら」
そう言って戸賀崎先生は生徒指導室から撤収していった。


■筆者メッセージ
もしかしたら今日中もしくは0時回ったぐらいにもう一度更新するかもです。

感想お待ちしています。
Alice ( 2013/12/03(火) 20:52 )