02
「あ、あのヴェリタ探偵事務所はここで合っていますか?」
その3人は見るからに普通の人間ではない。3人ともボロボロの汚れた服。真ん中の長髪の少女は右腕から出血している。新司は眉間に少ししわを寄せて3人を見る。一方の泰斗は目を輝かせていた。
「泰斗さん、どーしま…」
「合ってます、合ってます!こちらにお掛け下さい!」
「…マジかよ…」
新司が相談しようとするが泰斗はお構いなし。意気揚々とすぐさま3人をソファへと案内する。新司はため息をつきながらお茶を準備しようと少女たちの後ろへ回ったとき、彼女たちの背中に書いてある文字を見て驚いた。
「さて、依頼の内容をお聞かせ願いますか?」
「あ、はい。実は…」
「泰斗さん!ちょっと…」
「なんだよ…。少々お待ちください」
完全に仕事モードに入った泰斗が依頼内容について質問した。真ん中に座った少女が話をしようとすると、突然新司が泰斗を呼んだ。
「泰斗さん、この依頼辞めましょう!だって、あの子たち…」
「囚人だろ?わかってんよ」
焦って話す新司に対し、泰斗はケロっとした表情で答える。それを聞いた新司は「えっ?」とした表情で驚く。
「だ、だったら、なんで?」
「囚人が脱走したとなったら即ニュースになってこの辺パニックだわ。それがねえってことはどっからか圧力掛かって報道できねえんだろうよ。まぁ、、なにより…」
「なにより?」
「困っている女の子を放っとくなんて男が廃る!」
「……これだよ」
泰斗は無類の女好き。さすがにあの少女3人に対して恋愛感情はないだろうが、いつもこれには新司も困らされている。過去の依頼で、依頼人の女性にベタ惚れし仕事にならなかった事もあったくらいだ。
「まあまあ、久しぶりの仕事なんだから、いいではないか、新司くん」
「そうは言っても…」
「別にいいですよ。引き受けられなくても」
新司の肩にポンと手を置き、説得をする泰斗だが、新司は納得できないよう。その時、後ろから長髪の少女が話に割って入る。
「警戒されるのも当然ですよね。見ての通り私たちは囚人で、刑務所から脱獄した身です。私たちの事でお2人を巻き込むのは悪いです。すいませんでした。失礼します」
「……待って」
少女は2人に謝罪をすると後ろへ振り返る。それに合わせてソファに座っていた2人も立ち上がり、ドアへ向かって足を進めていった。その時、新司が3人に声をかけた。その声に3人は振り返った。
「…分かった、引き受けるよ。その依頼」
少女の言葉に申し訳なく思ったのか、新司は後頭部を掻きながら依頼を受理した。その言葉に泰斗は新司の肩に再びポンと手を置き、2人の少女の表情は明るくなった。だが、長髪の少女だけは心配そうな顔をしていた。
「いいんですか!?2人の身に危険が及ぶかもしれないんですよ!?」
声を荒げ話す少女。その声に2人の少女は驚くが、泰斗はその声に動じる事なく、笑顔をその子へむける。
「いいんだよ。俺らはどんな奴もウチに来たからにはそいつは依頼人だ。例え囚人だろうがな。それが俺のポリシーだ」
「……さっき、困っている女の子を放ってたら男が廃るとか言ってたくせに……痛っ!」
泰斗は決め台詞を言うように話をするが、新司が余計なことを言ったため台無しに。泰斗は新司に容赦なく無言で鉄拳制裁を下した。その様子を見ていた3人はクスクスと笑う。
「では、お三方。改めて依頼の内容を聞かせていただきましょうか」
泰斗は再び依頼内容を聞くため、3人をソファへと座らせた。