高橋家
出会い
朱里の父は屋敷に一人の少年と共に帰った。

「今日からここがお前の家だ。そして、私はお前の主人だ。」

「は、はい。旦那様。」

少年Aは朱里の父によりかなりの恐怖を与えられてここにきたようだ。

「お父様。お帰りなさい。」

「あぁ、朱里。お前にお土産だよ。今日からお前の執事になるAだ。」

「よろしくね。」

「はい。よろしくおねがいします。お嬢様。」

「それじゃ、私は出かけてくる。」

父親がいなくなると朱里はAに近寄った。

「君、大丈夫?」

「平気です。」

「お父様はいなくなった。私と友達になって。」

「良いんですか?僕なんかと友達になったら旦那様にお嬢様も怒られます。」

「お父様がいない間だけよ。私は高橋朱里。」

「Aです。」

「A。外の話を聞かせて。」

「はい。」

二人は手を取り合いながら、朱里の部屋に向かった。

Aが外のことを話すのを朱里は笑顔で聞いていた。

話が途切れると、朱里は悲しそうな顔をした。

「どうしました?お嬢様。」

「うん。外のこと聞いてたら羨ましいなって思って。」

「どうしてですか?」

「だって、私の未来はもうお父様に決められた。私はいずれこの家の為に誰かの元に行く。私も普通の家に生まれたかった。」

「お嬢様。未来が決められなくても次の瞬間は自分で決めるものですよ。それの連続が未来になると僕は思います。」

「ありがとう。」

二人の物語はここから始まった。

■筆者メッセージ
朱里ちゃん編まずは一話目。
今作は三編同時進行で作っていきます。
光圀 ( 2017/03/10(金) 16:35 )